「『ほとんどない』ことにされている側から見た社会の話を。」

2020年08月08日

先日受講した「ヒューマン・ライツ・ナウ」の性暴力についてのオンラインイベントで小川たまかさんを知り、著書を読んでみたいと思いました。
性暴力被害者の問題等に取り組む、フリージャーナリストさんです。「ほとんどないことにされている側から見た社会の話を。」(タバブックス)は、小川たまかさん初の著書だそうです。

すごく驚いた話しがありました。

この本が書かれた2016年の時点で、「痴漢」とか「レイプ」をGoogle検索するとトップに上がってくるのはアダルトコンテンツだったそうです。
そうした影響かどうかわかりませんが、村瀬幸浩という一橋大学などでセクソロジーを教える先生がレイプの話を授業でしたときに、男子学生から「今までレイプはセックスのバリエーションの一つだと思っていた」というコメントがあったというエピソードが本の中で紹介されています。
びっくりしました。
念のためにGoogleで「痴漢」「レイプ」検索してみました。
今は、卑劣な犯罪としての記事があげられています。
性犯罪やジェンダーの問題を正面から考え、声をあげる女性たちの存在で、社会も少しずつ変わっているんだなぁと思い、ホッとしました。
常に意識し、声をあげていくことの大切さを改めて学びました。

もう一つ、ショックな話がありました。
『性暴力の理解と治療教育』(藤岡淳子)からの引用ですが、
「ある性犯罪少年は、特定の彼女もいて定職もあり、それまで大きな非行もなかったが、遊び仲間に誘われて輪姦行為に加わり、それを繰り返していた。彼によれば『強姦(輪姦)は、彼女とのセックスとは全く違った。泣き叫ぶ被害者の衣服をはぎとり、殴りつけてセックスするといった、ビデオで見たような、自分が思っていたような『強姦』ともまったく違った。実際には、ホテルの部屋に連れ込んで仲間三人で取り囲んだだけで、被害者はまったくおとなしくなった。進んで服を脱ぎ、言われなくても『恥ずかしい』姿態をとり、こちらの機嫌をうかがって何でもした。ハーレムの王様になったようで、自分が強くなったようで、とても気持ちよかった」と述べている。

・・・めちゃくちゃショックな話です。
多分女性なら誰でも、こんな風に男性に取り囲まれたら、どんなに嫌でもその場では従順に従うでしょう。
それが最大の防衛だと、誰もが思うところでしょう。
このケースは被害者が被害を届け、警察も被害をちゃんと取り調べて、加害者は逮捕・起訴されました。
しかし実際にはこういう事例で「抵抗していない」「同意したと思われても仕方がない」と言われてしまうケースや、逮捕されても不起訴で終わってしまうケースがたくさんあるということが、本当に残念だしショックな話だと思います。
実際、東京慈恵医科大学付属病院のお医者さんたちは、集団強姦で逮捕されましたが、不起訴になりました。そしてそのお医者さんのうちの一人は、少なくとも5回逮捕されていて、これまで全て不起訴になっているという話です。
2015年に大阪で起きた警察官らによる集団強姦事件では、被害女性は「目隠しをされ両手を縛られた」けれど、加害者らは女性の抵抗が弱まったことから「同意があった」と弁解したとのことで、不起訴処分となっています。

今の刑法が男性目線で、女性の人権・人格を尊重したものでは全くないということが、よくわかるお話だと思います。

ゴルフ教室を主宰する男性が、生徒である18歳の少女をゴルフ指導の一環との口実でホテルに連れ込み、姦淫。
被害者が強い支配従属関係であったとは認められず、解離状態であったことを裏付ける事実も認定できないと、「抗拒不能に陥るほどではなく、自分から主体的な行動を起こさなかった可能性も排斥できない」と無罪判決(平成26年3月)。
高裁判決では、被害者に合意の意志がなかったことや、更に精神的な混乱から表立った拒絶ができなかったことはほぼ認定したものの、被告人が「無神経」な男性だったため、被害者に拒絶の意志があったことを理解できなかったと判断し、無罪となったとのこと。

24歳の男が女子中学生に声をかけ、性交。
少女が性交に同意していなかったことは認められるが、被告人が「犯行を著しく困難にする程度の暴行」を加えたとは認められず、また「男性が少女が性交を受け入れたと誤信した」疑いは払しょくできないとして、無罪判決(平成20年6月)。

こんなことがまかり通る日本の刑法、やっぱり変えなくてはいけないと思います。
今年は刑法見直しの年。
コロナの問題にばかり目が向いてしまう昨今ですが、しっかり考えないとと思います。