「免税事業者に大きな負担を押し付けるインボイス制度」学習会

2022年04月01日

24日は「消費税をなくす吉川みなみの会」主催の学習会が開催され、私も参加させていただきました。
テーマは「免税事業者に大きな負担を押し付けるインボイス制度」、講師は「消費税をなくす埼玉の会」の永塚友啓さん(税理士法人第一経営・株式会社第一経営相談所)でした。私も12月議会に「インボイス制度の中止を求める意見書」を提出させていただいたので(残念ながら否決されましたが💦)、興味深く学ばせていただきました。

私たちは買い物をするたびに「消費税」を支払っているので、「消費税」を支払うのは私たち国民だと何となく思い込んで過ごしています。でも実は私たちが支払っているのは消費税分を転嫁された価格であり、本当に消費税を支払うのは事業者の皆さんです。
事業者のみなさんは、売り上げに係る消費税額から仕入れにかかる消費税額を差し引いて(仕入れ額税控除)、その差額を消費税として納めているのです。
事業者の中でも、年間売上が1,000万以下の事業者は「免税事業者」とされ、消費税の支払いを免除されています。 

もともと1987年7月に当時の竹下登元首相が消費税法案を国会に提出した際に、「小さく生んで大きく育てる」と言って税率を3%に、年間売上が3,000万円以下の事業者を免税事業者にとしたのでした。

その背景にはその前年、当時の中曽根康弘首相が消費税の前身・売上税関 連法案を国会に提出し、小売業者らの強い反発を受けて廃案を余儀なくされたことによるものでした。
「小さく生んで大きく育てる」とはよく言ったもので、確かにその通り、税率は3%から今や10%に(@ ̄□ ̄@;)!!
免税事業者も売上げ3,000万円以下から1,000万円以下へと縮小されましたΣ( ̄□ ̄|||)
更に今回導入しようとしているのが「インボイス制度」です。更に今回導入しようとしているのが「インボイス(的確請求書保存)制度」で、来年10月1日以降の取引に導入される見込みです。

「インボイス」とは、取引で取り交わす請求書等の書類(的確請求書)のことで、その書類には「登録番号」の記載が必要です。
登録番号を発行するのは税務署ですが、その番号を発行してもらえるのは「課税事業者」に限られています。
つまり、免税事業者には登録番号は発行されず、的確請求書には必ず登録番号の記載が求められているため、登録番号のない免税事業者との取引は控除の対象とはならなくなり、その結果免税事業者が取引から排除されてしまう可能性があるのです。
もちろん免税事業者が課税事業者になって、登録番号を発行してもらうことは可能です。
しかしその際にはこれまで免税されていた税を納付しなくてはならなくなるわけですから、当然収入は減ります。
今のまま免税事業者として事業を続けることももちろん可能ですが、その際には取引先の事業者が「控除」が受けれなくなってしまうので、その「損失(?)」を補填するために値引きを強要される可能性があります。
インボイス制度が始まってしまうと、もともと厳しい経営状況の中にあるので「免税」されていた事業所が更に厳しい経営状況に追い込まれるリスクが高いのです。
講師の永塚さんは「『大きな負担を押し付ける』だけで済むのか、場合によっては廃業にまで追い込まれる」と話されました。

また免税事業者に対し「消費者から消費税をもらっているのに、納税が免除されるのはおかしい」と、「ズルしてるのでは?」といった見方があります。
私が12月議会に「インボイス制度の中止を求める意見書」を提出した時にも、そういった趣旨の質問をされました。
しかしこれはズルをしているのではなく「消費税法」で定められた正当な制度であり、また法律で税額を免除する制度は無数にあるのだそうです。
租税特別措置の適用実態調査結果では、

大企業はわずか18万件で8,000億円を超える控除がされていて、一方中小零細の免税事業者は日本に500万もあるのにその控除額3,000億円との実態(@ ̄□ ̄@;)!!
それなら大企業からしっかりと税金をとるという制度にした方が、良いのではないでしょうか。
それをしないで中小零細事業者に負担を押し付ける政府の姿勢は、とても理解することができません。

更に見逃せないことは、インボイス制度の導入で影響を受けるのは、想像以上に様々な事業者の皆さんです。

農業:農家の9割が免税事業者で「農協特例」があるそうですが、生産者ブランドにはインボイスが必要とのことです。取引を行う産直センターは、農家が課税事業者にならなければ消費税の納税額が大幅に増加して、経営が破綻する可能性もあるとのことです。
シルバー人材センター:全国にセンターの会員が約70万人。会員一人平均年40万円ていどの配分金があるそうです。会員の高齢者が会員になってもらう場合、経費がなければ会員は約4万円の消費税を支払うことになるそうです。そして会員の高齢者は、その4万円の納税のために課税事業者になり、確定申告を行い、帳簿や請求書の保存を7年間義務付けられるということです。しかしその負担を乗り越えてもらわないと、今度はセンターに負担がのしかかり、もはや存続の危機とのお話でした。
出版文化:出版社の場合、本づくりにはライターやデザイナ・イラストレーター・写真家など、様々なスタッフがかかわっています。その大半はフリーランスです。インボイス制度が導入されると、原稿料や印税と共に消費税を支払っても「インボイス」をもらえず、仕入れ額税控除ができず、消費税の負担が激増します。
個人タクシー:個人タクシーのほとんどは年商1,000万円未満の免税事業者であり、コロナ禍以前でも営業収入は平均年170万円程度。しかし地域の交通を担う非常に重要な事業です。
免税事業者のままでいればビジネス客からは敬遠され、旅行代理店から仕事を受注している観光個人タクシーは発注を打ち切られる可能性もあります。もし個人タクシーが大量に廃業してしまったら、「足」の確保もできなくなってしまう可能性があります。

・・・こんな無理を犯してまで、インボイス制度を導入する必要が一体どこにあるのでしょうか。