『あの少女の隣に』を再び

2022年11月24日

くるみざわしんさん作・演出、川口龍さん出演の一人芝居『あの少女の隣に』を観に行ってきました。
昨年の今頃一度観たお芝居ですが、深く感動したのでどうしてももう一度観たくて行きました(⋈◍>◡<◍)。✧♡
やっぱり、スゴいお芝居でした。

「慰安婦問題」を男性の立場から描いているのですが、何故「慰安婦」や「売春婦」が必要なのか、社会の仕組みを鋭く描いているのです。
戦場で戦う兵士をリラックスさせ、心を癒してまた闘いを続けさせるためには「女」が必要。
その「女」を集めるためには、貧乏で身を売るしか食べていく方法のない「女」の存在が必要。
国は「女」たちを集めて身を売らせながら、あれは「女」たちが勝手にやっていることで困ったことだと取り締まればいい。
そして「女」の敵は「女」。身体を売って身を立てることなどとは程遠い、上流階級の女性たちをけしかけて「怪しからん女性たち」と攻撃させ、女性を分断させれば文句を言う女性がいなくなる。
国には常に、身を売るしかない貧しい「女」が必要。
従軍慰安婦として戦地に連れて行くために、敗戦後は進駐軍のために。

進駐軍が来て日本の「女」たちを強姦するに違いない。
日本の「女」を守るために、貧しい「女」たちに外国人相手に売春をさせる。
「国を守るためだ」とけしかける。
上流階級の女たちは怒り、蔑む。国はそういう構図を用意するだけでいい。
身を売るしかない「女」たちを作り出すためには女性の給料は低く抑え、社会的地位も低くして・・・。
そしてそういう日本の構造を利用して、米軍はのほほんと「女」たちを買う。
日本が勝手にやったことだと言い訳をちゃんと用意して。
日本は困ったものだと言いながら、「女」たちを買いたたく。
性病を移しても平気。
それは日本がちゃんと「女」たちに性病検査をしないからだと、自分たちが被害者のように主張する。

お国でこうしたことが問題視されると日本にやめるように命じるけれど、「女」を買うことそのものはやめようとは思わない。日本でもアメリカでも、女性を性交の対象とだけしかとらえない、女性の人格・人権を考えようともしない人々。
スゴい世界をあぶり出したお芝居だと思います。

私はくるみざわしんさんのシナリオが素晴らしいと思っていますが、同時にこのお芝居は慰安婦の問題に深い理解を持つ俳優さんなしには成立しえないお芝居だと思います。
1時間20分、一人で膨大なセリフをしゃべり続ける川口龍さん、スゴいと思います。
慰安婦問題やジェンダー平等についてそれなりの理解がなければ、到底演じられないお芝居だと思います。
どうやって勉強されたんだろうと、興味深々です。
来月には日本人慰安婦だったことが分かっている、城田すず子さんをモデルにした舞台「マリアの賛歌 石の叫び」の上演が予定されているそうです。
城田さんの本『マリアの賛歌』は私も読みました。
どんな舞台になるのか、とても楽しみです。
来月の上演は大阪なので残念ながら観れませんが、東京での公演を楽しみに待ちたいと思います。