『ウチの母が宗教にハマりまして』

2022年09月19日

『ウチの母が宗教にハマりまして』(藤野美奈子著 島田裕巳監督 KKベストセラーズ)を読みました。

「深刻になりがちな宗教トラブル話を明るく描く」という非常に難しい命題を編集者さんから与えられ、それに応えて宗教学者でもある島田裕巳さんの援助も受けながら描かれた、社会派コミックというのでしょうか。
読んで、いろんなことがわかりました。
まずわかったのは「カルト」とは何かということです。
「カルト教団」と聞いて、某教団をを思い起こす人は少なくないと思います。
教団だけで不思議な生活をしていただけでなく、サリンや弁護士一家の殺害などの凶悪なテロ、そしてカリスマ教祖への盲目的な神人など90年代中盤、多くの人が連日の報道に釘付けになったかと思います。
私もそういう物騒な、アブノーマルな宗教団体を「カルト教団」と呼ぶのだと何となく思い込んでいました。
でも「カルト教団」とは、「憲法に定められた基本的人権を守らない団体」を指すのだそうです。
例えば子どもを学ばせることなく宗教活動をさせ、教育の機会を奪うこと。
付きまとって入信を迫り、脱会させないようにプレッシャーをかけ、精神の自由を奪うこと。
「悪霊を追い出す」と、嫌がる人に無理やり暴力をふるったり、子どもに体罰を加えること。
医者に連れて行かないとか睡眠をとらせないとかもダメな一方、世間の常識から見ると奇異に見えてもカルトではない教団も多いのだそうです。
これまでカルトっぽくて話題になった宗教団体もありましたが、信者は出入り自由で強制労働や性関係の強要などもなく、人権が守られていた団体は奇異ではあったとしても「カルト教団」ではないということです。

それから「マインド・コントロール」とは何かということです。
「マインド・コントロール」とは「昔からのその人らしさ」を封印した後新しい考えを信じ込ませ、まるで教祖のロボットのようにしてしまう作業のことを言うそうです。本人はあたかも「目覚めた」かのように感じ、普通に生活できるので操られていると気付かず、「自分で選んだ道」だと信じてしまうのだそうです。
悩んでいる人の心に付け込み、正体を隠して近づき、褒めちぎり、親切の嵐で包む・・・。
信頼させて、悩みや秘密を打ち明けさせる・・・。
その秘密は更に信頼を深めるために利用される・・・。
疑問を口にしても「もっと学べばわかる」とかわされる・・・。
外部の意見を聞けないように情報が遮断された環境に隔離され、立ち止まって考えることができないように常に集団行動で休みなく学ばされる・・・。
もし途中で脱落したら「天罰が下る」と刷り込まれてしまい、この恐怖のために脱会できないようになってしまうそうです。
運よく脱会できても、この恐怖は簡単には消えないそうです。
マインドコントロールがある団体は宗教ではなく、宗教を利用したサギ集団であり、その大部分は善良なるロボットの人たちだということです。
こういう教団は高齢者や障がい者など、稼げない人たちを入信させないとも💦

一方で傍から見るとどんなに不合理で愚かしく見えても、マインド・コントロールと基本的人権への侵害がなく、信じることでその人が救われているのであれば、それは「思想信条の自由」ということになるのだと思います。
著者のお母さんもおかしな宗教にハマり、毎日毎日非常に大変なノルマをこなしているようですが、そのノルマは誰に迷惑をかけるものでもなく、人権も脅かされてはいない・・・。
信じることで本人が救われているのなら、それはそれで尊重するしかない・・・。
そんな風に感じながら読みました(⋈◍>◡<◍)。✧♡