『カルトの子』

2022年07月26日

山上容疑者が安部元首相が銃撃し、生命を奪った事件。
容疑者の母親が「統一教会に迷惑をかけて申し訳ない」と発言したとの報道に、本当に驚きました。
どんな理由があっても他人の生命を奪う理由にはならないと思います。
それでも容疑者の苦悩を考えてしまいます。
20年近く前にたまたま見つけて買って読んだ本、『カルトの子』(米本和広著 文春文庫)をもう一度読みなおしてみました。

オウム真理教の教団施設・エホバの証人の家庭・統一教会の共同保育所・ヤマギシ会の実顕地、それぞれで育てられた子どもたちに焦点を当てたルポルタージュです。
そこから逃げ出した子どもたちの証言を基に、それぞれの凄まじい子どもの取り扱いがあぶり出されています。

発育不良で、箸が使えず、入浴の仕方も水洗トイレの使い方、更には着替えの仕方も分からない子どもが複数いたというオウム真理教。
体罰を奨励し、「この世」の子どもとの交わりや進学先を制限され、戒律を破れば「滅ぼされる」という恐怖心にがんじがらめにされるエホバの証人。
万物復帰、この世のすべて(人・モノ・カネ)を文鮮明のもとに取り戻し、地上天国を一刻も早く実現するとする統一教会では、親は子どもたちを共同保育所に預けて活動をしていたとのこと。
保育所と言ってもにわか保育士がいるだけの施設で、一旦預けられると親はいつ帰ってくるかさえわからない状況。
子どもが問題を起こしても親はそれと向き合うことなく、見ているのは文鮮明の方ばかり。
エホバの証人のように高等教育を否定されることはなくても、相次ぐ献金によって親は貧しく、とても大学に進学できるような状況ではないと。
子どもへの暴力がすさまじく、また高校や大学への進学もできず、過酷な状況の中での暮らしを強いられるヤマギシ会。

それぞれに性格の違うカルト(団体)でありながら、一つの共通項があるとの著者の指摘。
親がカルトに入ると関心がカルトに向けられ、子どもは二の次にされ、子どもは親の欲求を充足させるための存在になる・・・。
そこでは平然と虐待が繰り返されていて、オウム・統一教会・ヤマギシ会は「ネグレクト」。
エホバの証人とヤマギシ会は「身体的虐待」。
「心理的虐待」はすべての団体に当てはまり・・・。

そこから逃げ出した子どもたちは、もがき苦しみながら一般社会の中で必死で生きてる・・・。
この本は2004年に出版されたものなので、その後改善されているのかどうか迄はわかりません。
また年齢から考えると、山上容疑者は共同保育所で育ったわけではないと思います。
が、山上容疑者のお母さんの言葉と本に描かれた内容とは完全に一致しているように思い、胸が苦しくなります。