『食べ物が劣化する日本』

2021年04月24日

『食べ物が劣化する日本 命を紡ぐ種子と安全な食を次世代へ』(安田節子著 食べもの通信社)を読みました。

「食糧はエネルギーと並ぶ国家存続の2本柱です。戦後一貫した米国の『食料は武器』の国家戦略によって、日本の食は米国にじわじわ握られていき、いま最終仕上げの局面を迎えているのです。
輸入食品はアフラトキシン汚染、高い農薬残留、ホルモン剤、遺伝子組み換えなどの問題を抱えており、私たちに健康リスクをもたらします。関税が一段と下がって、安い輸入食料が席巻するようになれば、国内農畜産業は立ち行かなくなるでしょう。ごく一部の企業がもうかる農業を実現したとしても、国民全体のいのちや健康、そして環境リスクは増大してしまいます。
目先の経済効率の追求で林業や農業が衰退し、山が荒れ、耕作放棄地が増えたため、ゲリラ豪雨に耐えられず、洪水が起きやすくなっています。全国に広がる獣害もそうです。国内をこのような状況にして、私たちの食べ物は海外で作ったものでいいのでしょうか」。(P180~181)

これは本書の抜粋です。
ここに書かれている通りに、遺伝子組み換え食品・ゲノム食品・種子法廃止・除草剤ラウンドアップ・ネオニコ系農薬・農薬&化学肥料の大量使用・畜産業で使用する抗生剤&ホルモン剤・食品添加物・輸入食品について、それぞれに具体的に私たちの体にどんな影響があるのか、とても丁寧に記されています。

遺伝子組み換え作物

日本の市場に流通している遺伝子組み換え作物は、大豆・トウモロコシ・綿実・ナタネの4種類。これらの作物の主要な輸出国では高い割合で遺伝子組み換え品種が生産されており、日本に輸入されている4つの作物は、いずれもほぼ90%が遺伝子組み換え品種と推定されるます。(P10 )
遺伝子組み換え作物の一番の特性は、除草剤を浴びても枯れない性質を持っていること。もう一つは、殺虫毒素を持ち、これを食べた虫は死ぬということです。
ロシアの遺伝子組み換え大豆を食べさせた母ラットの実験で、子ラットの死亡率が著しく高くなったそうです。(51.6%)通常大豆のものは10%と💦
またフランス、ラットに遺伝子組み換えトウモロコシ、ラウンドアップ水溶液(発がん性が指摘されている強力な除草剤)、その両方を餌として与えた3つの実験いずれもでラットに巨大腫瘍ができ、早期に死亡したそうです。

遺伝子組み換えサケは、成長ホルモンに関連したインスリン様ホルモンが自然のサケに比べて高く、人体の血中ホルモンへの影響は明らかではないそうですが、いくつかの研究ではがんのリスクと関係することが示唆されているとか。
深刻なことは、遺伝子組み換えサケが万が一海に逃げ出した場合のことです。
普通のサケの最大25倍もあるそうで、大量にえさを食べてしまう他、天然サケと交配した場合、生態系に悪影響を及ぼすと指摘されています。

ゲノム編集技術

ゲノム編集技術は、遺伝子のどの部分でも切断することができ、その働きを止めることができるそうです。
切断した箇所に別の遺伝子を挿入することもでき、遺伝子組み換えとは比べ物にならないほど効率よく、容易にこれまでにない形質を持たせた生物を作り出すことが可能になりました。
筋肉森盛のマッチョ豚・マッチョ牛・マッチョタイ・マッチョトラフグなどが開発され、通常より1.5倍~2倍ほど多く肉が付き、成長が早いそうです。
ゲノム食品は自然界では起こりえないほどの頻度で、そして同時に複数の遺伝子に変異を引き起こすことができます。
しかし、それが自然界に与える影響を予測することはできません。自然界では淘汰されてしまうような生物を増やしてしまうことになるかもしれませんし、環境に重大な影響を与えるかもしれません。いったん環境に放出されると、花粉や手指などで自己増殖し、子孫に遺伝していくので、元に戻すことは不可能です。

近年、遺伝子の研究が飛躍的に進み、生体内では遺伝子が単独で機能しているのではなく、広範囲のネットワーキングの中で機能していることが明らかになっています。1つの遺伝子の機能を破壊することは、遺伝ネットワーキング全体をかく乱することになり、作物についても有害な生物が生まれる可能性が懸念されています。

ネオニコチノイド農薬

カメムシは害虫ではありませんが、植物防疫法で有害指定動植物に指定されているそうです。全国で、カメムシの発生警報が出されると、有人ヘリや無人ヘリで農薬が一斉に散布されるそうです。農薬によって、カメムシやヤゴ(赤とんぼ)がいなくなりました。
ネオニコ系農薬の特徴は、①浸透性、②残功性、③神経毒性です。
浸透性があるため、ネ・葉・茎・果実に浸透し、洗っても落ちません。残功性が高いため、農薬使用量が少なくて済み、減農薬栽培として多用されているそうです。
ネオニコ系農薬は神経伝達物質であるアセチルコリン受容体を阻害することで、昆虫を殺します。
アセチルコリンはヒトでは自律神経系・末梢神経に多く、記憶や学習、上道など中枢神経でも重要な働きをしています。近年、免疫系や脳の発達にも重要な働きをしていることが明らかになっています。

抗生剤漬けチリ産養殖サケ

スーパーで売られている輸入サケの70%をチリ産が占め、「冷凍物」ではチリ産が80%、「生鮮冷凍物」はノルウェー産が90%だそうです。チリ沿岸の海にはピシリケッチア症という、サケの病気の原因になるバクテリアが大量に生息しているそうです。3日ほどで養殖場のサケが全滅すると言われるほど感染力が強いということで、これを避けるために抗生剤が大量投与されています。
その結果、サケの皮膚に「サケジラミ」が寄生し、これを駆除するために殺虫剤が使用され、さらに養殖場の海水汚染による感染症の予防のためにまた殺菌剤や抗生剤が使われているそうです。
養殖サーモンは天然サーモンより多くのダイオキシンなど有害物質を蓄積していて、食べ続けると幼児にIQの低下や発育障害をもたらす恐れがあるそうです。

輸入牛肉の成長ホルモン

アメリカ、オーストラリア、カナダでは牛の肥育促進にホルモン剤の使用が認められています。ホルモン剤を注射すると成長が早まり、肥育期間が短くなり、利益が10%アップするそうです。
そのホルモン剤は牛の耳に注射し、その耳は食肉処理をするときに「危険物」として焼却処分されるそうです。
日本では肥育用にホルモン剤を使うことは認めていませんが、ホルモン剤が残留した牛肉が日本国内に出回っていることは否定できません。
91年の牛肉の輸入自由化により、輸入牛肉の価格が下がり、消費が拡大しています。
それと並行して、日本では乳がん・前立腺がんを含むホルモン依存性がんが増加し、障害で乳がんを発症する確率は11人にひとりになっています。
前立腺がんは10年前には胃がんや大腸がんよりも少なかったのに、今では大腸がんを抜いて肺がんと肩を並べる勢いです。

危機感を持たなくては💦

こうした危険な食材が今や大手を振って日本に輸入され、日本の食卓に提供され、そして私たち日本人の健康が脅かされています。しかし、こうした事実はほとんど報道もされていません。
世界各国が規制を強化し、自国民の食の安全を守ろうと動く中で、日本は逆に規制を緩和している現実。それだけ日本人の食の安全は脅かされているという現実を思い知らされます。食料自給率は37%。種子法の廃止でコメなどの穀物種子を内外のアグリビジネスに明け渡し、アメリカに食料を握られようとしている今、私たちが何をしなければならないのかを深く考えさせられます。

昨年の9月議会に市民の会・無所属の岩田京子議員が「ゲノム編集応用食品の表示義務を求める意見書」を提出しました。私も賛同議員として、名前を連ねさせていただきました。本当に残念なことに、自民党・公明党・未来会議よしかわの計10名の議員の反対で否決されました。
未来会議の反対理由は、「技術革新のブレーキになる」という驚きのものでした。何よりも子どもたちの食の安全を守るべき、子育て世代の議員の発言とは、正直とても思えませんでした。
この本を読み、岩田議員が提案した意見書が否決されたことを今更ながら残念に、そして悔しく思います。