この本、面白い(⋈◍>◡<◍)。✧♡~農で輝く!奇跡の農園~

2021年10月13日

本屋さんで何気なく見つけた『農で輝く!奇跡の農園~ホームレスや引きこもりが人生を取り戻す~』(小島希世子著 河出書房新社)、興味を惹かれて、家には積読が山盛りになっているのに、ついつい買ってしまいました。
とても面白い=興味深い本でした。

自然農法での野菜作りを続ける著者が、藤沢市でホームレスや生活保護受給者・引きこもりの方々が参加する「体験農園」を営み、更にその活動を広げている・・・。簡単に言ってしまえば、そういうお話です。
「自然と共に生きるのが‟農の道”」との教えを胸に農を営む著者のモットーは、「野菜は人間が作り出すのではなく、自然の力を借りて食べられる状態にする」というもの。

2008年に体験農園を始めた著者が、体験者のいない平日の畑の管理を誰に依頼するか迷ったとき、思いついたのがホームレスでした。「仕事を求めるホームレス」と「働き手を求める農業」との相性がとても良いと感じ、ホームレス支援団体に依頼して農で働きたいホームレスの紹介を受け、その事業を拡大しながら今もずっと続けているのです。
著者のもとに体験に来たホームレスの中には就農した人もいれば、そうでない人もたくさんいます。
決して農業従事者を育てることを目的にしているわけではありません。
しかしホームレスと一緒に仕事をする中で、著者はいくつかの発見をします。
まず一つは、働く意欲が高く、体力もある人材が路上にたくさん埋もれてしまっているということ。働く意欲を失い、働くことを諦めてしまっているホームレスもいるけれど、それ以上にきちんとした仕事を得て自立したいと思っている人がたくさんいることに気付きました。
ホームレスと言うと「働けるのに働かない人」というイメージを持ちがちです。しかしホームレスの人々は空き缶拾いや日雇い仕事などを毎日コツコツとやり続けていて、働き口さえあれば普通の人以上に頑張るホームレスがたくさんいるそうです。

ふたつ目はそこで働くことにより、ホームレスたちの表情がだんだん明るくなっていくということ。
3つ目はホームレスも他のホームレスではない人と、何も変わらないということでした。

厚生労働省が毎年行う「ホームレスの実態に関する全国調査」によると、令和元年現在のホームレス人口は4555人。平成24年以降年々減少し、平成15年の2万5,296人の5分の1以下に減少しました。
ただし、この調査の対象は「屋根のない状態で暮らしている人」に限られていて、ネットカフェやドヤ街・サウナ・公共施設・病院・友人宅などを転々としている、「屋根はあるが家はない」状態の人は含まれていないそうです。
なぜなら、「ホームレスの自立支援等に関する特別措置法」によりホームレスとは「都市公園・河川・道路・駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいるもの」と定義されているからのようです。

人はなぜホームレスになってしまうのか?
そのプロセスは階段を転げ落ちる様に喩えられ、労働を失い、家族を失い、住居を失い、金銭を失い、最後には野宿の状態になる・・・。この図式を「カフカの階段」と呼ぶそうです。
カフカの階段で一番怖いのは、野宿から抜け出す時には階段が高い壁になって立ち塞がるところです。
落ちる時は一段一段だったから登るときも一段一段登っていけば良いかと言うと、そうではありません。
就職しても給料日までの生活費がないし、住居がなければハローワークは相手にしてくれません。保証人がいなければアパートも借りられません。資格や技術がなければ門戸は狭まり、そもそも自分や社会への信頼を失っていて働く意欲もなくなっているかもしれず・・・。
ホームレスから抜け出すのは、容易なことではありません。

https://bigissue-online.jp/archives/1065238982.html
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就農はホームレスを自立へと導く大きな可能性があり、ホームレスが一息に「カフカの階段」を飛び越える可能性さえ秘めていると考える著者。
その活動は生活保護受給者や引きこもりへの支援へと広がっていきました。

私も以前畑をやっていたので、農が人を癒す力があることはよくわかります。
下手か上手かは別にして種を撒けばたいていは野菜が育つし、収穫物を誰かにおすそ分けすれば喜んでいただけるし、そして自分に自信を取り戻すことができると思います。
そんな農とホームレスを結び付ける発想と、やり続ける力、すごいなぁと思います。