『孤高の精神科医が世相を斬る‼』南埼玉病院院長瀬戸先生の著書を読みました

2019年11月30日

越谷市にある南埼玉病院の院長を務める瀬戸睿先生が昨年5月に出版された本、『孤高の精神科医が世相を斬る‼』を読みました。
南埼玉病院の家族会に参加している方が、わざわざ先生のサインまでいただいて、私にプレゼントしてくださったのです。
実は私、瀬戸先生の大ファンなんです。
温かくて、飾らなくて、優しくて、社会問題にもしっかりと目を向けるだけでなく行動もされていて。
すごい先生だなぁと以前から思っていましたが、本を読んで益々大好きになりました💕

私が社会人として最初に働いたのは、国立名古屋病院(今は名古屋医療センターと名称が変わっているそうです)の精神科病棟でした。
1980年代の初め、鍵をかけない精神科病棟はまだまだ少なかったと思います。国立名古屋病院は名古屋のど真ん中にあって、すぐ近くには大きな繁華街もある総合病院の精神科病棟で鍵をかけずに開放して治療を行っている病院というのはとても珍しかったと思います。
もっと精神科看護を学びたいと思い、退職して上京したときも私が選んだのは同じような、都心の総合病院で鍵をかけずに開放している精神病棟でした。
精神科病棟に鍵をかけず、患者さんを社会から隔絶させないことがとても大切だとそこで学びました。
実際、「社会と切り離さずに治療を続ける」というスタンスが、今では当たり前のものになりました。

この本を読んで、埼玉県で最初に開放治療を始めたのが南埼玉病院だったと知りました。
南埼玉病院は明るく自由な雰囲気を大切にしている病院です。今、患者さんやご家族は病院に閉じこもらないで外に出ていくことが求められていますが、医療従事者も仲間として一緒に外に出て、精神障がい者への偏見と闘っていく。
そのためには、まず自分自身の中にある統合失調症に対する差別意識に気づくことがとても大切だと書かれています。

びっくりしたのはウォルト・ディズニーがマッカーシズムの強烈な信仰者だという話でした。
マッカーシズムというのは、1950年代のアメリカに吹き荒れた左翼的と見られた政治家・学者・言論人・芸術家・映画監督・俳優らに対する政治的弾圧です。
「子どもたちに果てしない夢と希望、好奇心を与えたウォルト・ディズニーが一方で非道極まりないマッカーシズムの推進者であったことを私たちは知っておくべきです」と、先生は書いています。

もう一つ驚いたのは、アメリカの初代大統領ジョージ・ワシントンも実像は徹底的な差別主義者だったそうです。
1779年のインディアンに対する攻撃命令を発したとき、「村落をすべて破壊し、根絶やしにするように。単に制圧だけでなく絶滅させるのだ」と命じ、更に「インディアンも狼もどちらも生贄のけだものだ。まぁ、奴らはちょっと形は違っているが」と檄を飛ばしたそうです。
・・・そんな人だったなんて(@ ̄□ ̄@;)!!

もう一つ驚いたことがありました。
ロンドンのエコノミスト・インテリジェンス・ユニットによる世界40か国を対象とした「死の質ランキング」調査報告で、日本はなんと23位だというお話です。
1位はイギリス、2位はオーストラリア、3位はニュージーランド、4位アイルランド、5位ベルギーだそうです。
報告書の中で日本の医療について、「医療システムは高度だが在宅医療など、患者や家族に寄り添うケアが難しい」と記されているそうです。
最長の長寿国でありながら、一方では「豊かな死」には程遠い日本の現実。
安倍政権の中で、医療・介護はますます縮小方向です。
日本のランキングは更に下にさがっていくのかもしれませんね。

さて、この本の中で先生が繰り返しおっしゃっていることがあります。
それは、世界の中で戦争をしない国は日本とコスタリカだけだということです。
憲法9条で不戦を国是としている日本と、軍備を持たないから周辺国が戦争を起こしても戦争しないコスタリカ。
日本とコスタリカが協力して世界に平和を訴えていけばいい。
日本は自衛隊の軍備を解除して国際災害救助隊に再編して、軍事費として計上されている3兆円弱の予算を、世界で災害救助活動や災害で苦しんでいる被災者たちの救済のために遣う。
そうすれば日本だけでなく、世界の平和に役立てることができると。

本当に、その通りだと思います。