医療的ケアが必要な子どもたちの支援強化を

2021年04月19日

10年ほど前、私はとある訪問看護ステーションで働いていました。
「訪問看護認定看護師」という資格がどうしても取りたくて、半年間休職をして、資格取得のための研修を受けました。
3か月間の座学と演習、そして6週間の訪問看護ステーションでの実習。その後、卒業試験・実習で得た学びのまとめとプレゼン、そして研修終了後1カ月ほどしてから資格試験・・・。
確かそんな感じだったと思います。

私はある地方都市の訪問看護ステーションに実習に行きました。そこは医療的ケアが必要な小児をバンバン受け容れ、支援している事業所でした。
当時既に医療的ケアが必要な子どもたちが、地域でたくさん暮らし始めていました。
医療技術の進歩に伴い、以前なら「生後1年までの生存率は10%以内」とされていたような重い障がい・疾病を持つお子さんのいのちが繋がるようになってきていました。
そして在宅人工呼吸器療法なども普及し、訪問診療や訪問看護などによる支援体制も充実する中で、そうしたお子さんたちが病院を退院し、地域で暮らすようになってきていました。
研修に行った訪問看護ステーションで支援していたお子さんの中に、就学年齢に達するお子さんが二人いらっしゃいました。
人工呼吸器を装着して学校に行けるのかどうか、学校はどのように受け入れてくれるのか、非常にシビアな課題を抱えながら、そのステーションでは訪問看護を提供していました。
研修に行ったのは1月~2月中旬だったので、私はその最終結果を知りません。
あのお子さんたちは学校に行くことができたのか、どのような体制なら受け入れが可能だったのか・・・。
人工呼吸器を装着しているというだけでなく、自力で起き上がることもできず、意思表示をすることもできないお子さんでした。
その訪問看護ステーションが運営していた、療養通所介護に週に何回か通ってきていました。
意思表示できなくても、自分で動くことができなくても、そうして親から離れ、違う環境で一時を過ごすことには大変重要な意味があるように思えてなりませんでした。できれば学校に行って、同世代の子どもたちと関わってほしいと思いました。学校に行っても、主体的に自ら交流することは望めそうにありませんでした。それでも、きっと何かの意味があると、これはもうただの「感覚」でしたが、そう思いました。

あの研修から10年と少しが過ぎました。
10年を経た今、医療的ケア児への支援強化を議員立法として超党派で成立させようという動きがあるとの今日の東京新聞2面の報道。
ぜひぜひ実現をと、願います。
法案が目指すのは、医療的ケア児の「健やかな成長」と「家族の離職の防止」とのことです。
法制化しても看護師が深刻に不足している現実の中で、すぐに何かが変わるわけではないかもしれません。
それでも、私たちが暮らす社会の中に医療的ケアが必要な重い障がいを持つお子さんも一緒に暮らしていることは間違いのない事実だと思います。
そのお子さんたちが地域の中で健やかに過ごすことができ、学校にも行くことができ、ご両親も普通に当たり前に働き続けられる社会であること、とても大切なことだと思います。
ぜひ、成立させてほしいと思う法案です。