大国主義と独裁体制に向かう中国~香港国家安全維持法その2~

2020年07月20日

【習近平国家主席の独裁体制へ】
1989年国家主席となった江沢民以降、中国の国家主席は同時に中国共産党書記、更に軍の主席も兼任し、中国で最も重要な三役を独占しています。その「三役独占」状態が、胡錦涛氏・習近平氏へと引き継がれました。

習近平氏が国家主席になったのは2012年です。

2017年に開かれた全国人民代表大会(全人代)は、「新時代の中国の特色ある社会主義の偉大な勝利を勝ち取ろう」とのテーマのもとに開催されました。
習近平総書記を党の中心とすることを再確認し、「習近平による新時代の特色ある社会主義思想(習近平思想)」を党規約に明記しました。
そして、この思想は「学ばなければならない」と位置付けられました。

また、「現代中国は3つ目の段階に入った」とされました。

  1. 内戦で破壊された中国を毛沢東の下で立て直す時代
  2. 鄧小平の下で国民が豊かになる時代
  3. 団結と豊かさを更に高める一方で、国内では規律が守られ、対外的には強い中国を目指す

そして、「一帯一路」「中国の夢」「強国」「強軍」などの言葉が盛り込まれました。
「一帯一路」とは、中国からユーラシア大陸を経由してヨーロッパにつながる陸路の「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、中国沿岸部から東南アジア、南アジア、アラビア半島、アフリカ東岸を結ぶ海路の「21世紀海上シルクロード」(一路)のことです。この二つの地域で、インフラ整備・貿易促進・資金の往来を促進する広域経済圏構想を習近平氏は打ち出しています。
また「中国の夢」とは、2016年の全人代で提唱されたもので、中国共産党の統治理念「中華民族の偉大な復興」だそうです。

更にこの全人代で注目すべきことは、「一国二制度」と本土との統合の重要性が強調されたということです。香港に対し厳しい市政を示すことが、ここで容認されたのだと思います。

2018 年の全人代では、国家主席の任期「2期10 年」の制限(1982年導入)を撤廃する憲法改正が行われました。

これにより、習近平主席は2023年以降も続投が可能になりました。

習近平氏の独裁体制が着々と形作られています。
中国では記者に「習近平思想」のテストを科し、合格者だけに記者証を発行しているとのことです。

【大一統】
中華文明の中核思想とのことです。
この思想については、私も『南シナ海でなにが起きているのか 米中対立とアジア・日本』(岩波ブックレットNo956 山本秀也著)で読みました。

「中華の文化を有するところは中華民族であり、中華の歴史を有する土地は中華の土地とする」という考え方が中国にはあるそうです。
南シナ海は中国の領土だった歴史はないと思いますが、中国の海洋の歴史の中にほんの少しでも南シナ海に浮かぶ岩島が記されていると、それが中国古来の領土と考えられてしまう・・・。
それが、中国と周辺の国々との領土問題になっているとのことでした。 
「大一統」は中国の全国統一の思想であり、紀元前に成立した儒教の経典『春秋公羊伝」の言葉で、「統一を尊ぶ」という意味です。
「民族」「文化」「領土」の統一が「大一統」です。

良いとか悪いとかではなく、中国には昔からこうした考え方が根付いているということは、私たちが中国を理解する上では重要なことのように思います。

【中国の大国主義・覇権主義】
日本共産党は今年1月、党大会を開催しました。
今回、党綱領を一部改訂し、中国に対する綱領上の規定を見直しました。

中国は核兵器問題での変質が一層深刻になり、東シナ海と南シナ海で覇権主義的行動が深刻化しています。更に香港と新疆ウイグル自治区での人権侵害が深刻な国際問題となっています。中国に表れている大国主義・覇権主義・人権侵害は、どれも社会主義の原則や理念と両立しえません。
中国の政権党は「社会主義」「共産党」と名乗っていますが、その行動は社会主義とは無縁であり、共産党の名に値しません。
こうした判断のもと、中国に対する綱領の既定の見直しがなされた次第です。
(『改定綱領が開いた「新たな視野」』志位和夫著 新日本出版社 参照)

「社会主義国」でありながら、覇権主義・大国主義がなぜ生まれたのか。
それは、まず第一に中国では自由と民主主義が存在しない中で社会主義革命が起こされ、その後も自由と民主主義を大切にする国として発展しては来なかった・・・。
そしてもう一つには、中国社会の中に元々あった大国主義の歴史と無関係ではないでしょう。

【終わりに】
近年、アメリカを見ても日本を見ても、またヨーロッパを見ても、右傾化を強める国が増えてきていると感じます。
トランプ大統領や安倍首相に代表されるように、右寄りの非常に危険な人が国の政治のトップを務める、そんな傾向が広がっています。
しかし一方ではコスタリカやフィンランドのように、国民一人一人が大切にされる国々も増えてきていると感じます。
「資本主義」か「社会主義」か。
そんな対立ではないんだと感じます。
どのように一人一人の国民のいのち・くらしを大切にし、自由と民主主義を大切にする国をつくっていくのか。
私たち一人一人に問われているような気がします。

香港住民の運動が、世界的に見てもとても重要だと感じます。
そんな学びを得た学習会でした。

近現代史研究家 柴山敏雄さんに改めて感謝です。