小林昭子元議員の心に残る言葉「冷たい市政だなぁ」

2020年09月16日

市民交流センターおあしすの1階にあった、障がい者就労の場「はーとふる・ぽっと」が事業を閉鎖したのは一昨年、2018年の4月のことでした。
そもそもは市役所が今の場所に移転するにあたり、隣接するおあしすと新庁舎を繋げ、おあしすの2階に民間レストランを導入するとの発想から、コーヒーや軽食を提供するカフェ「はーとふる・ぽっと」は新しい市役所の3階、職員休憩室でパンとコーヒーを販売する方向で提案されたものでした。
市民交流の場の入り口に障がい者の就労の場があることはとても大切で、多くの市民から反対の声が寄せられました。
議会でも様々な議員がこの問題を取り上げ、移転させるべきではないと訴えました。
一昨年3月議会に提出されたおあしす改修予算も含む当初予算には、市民の会無所属の稲垣議員より改修予算を0円とする組み替え動議が出され、賛成多数で採択されました。その結果、おあしす改修はストップされました。

これで「はーとふる・ぽっと」もそのまま継続だろうと、みんなが一安心した矢先に、市から「予算が凍結されても、市の方針は変わらない」と迫られ、「はーとふる・ぽっと」は撤退を余儀なくされました。
そして一昨年9月から、母体であるフレンドパークさんのB型就労支援の場として、新しい市役所の3階職員休憩室でパンとコーヒーの販売が始められました。
これがはーとふる・ぽっとの大雑把な顛末でした。
そして移転後も、納得のいかない市民も議員もたくさんいる中で、議会でも繰り返し質問が続けられました。

一昨年6月議会、日本共産党の小林昭子元議員の質問に答えて、市長はこう答えています。
「真の就労というのはどういう形であるべきなんだろうということで、かなりいろいろな視察も重ねました。私が考える、その障がい者の就労というのは、ある仕事、もう既存の仕事にその障がい者を当てはめていくんではなくて、やはり障がい者一人ひとりが自分たちが持っている能力、やれることをやれるような仕事をつくり出していく、そういう場所をつくり出していくということが一番大事なんではないかなと思っています。」
9月議会での答弁は「庁舎との一体整備の中で、庁舎の中でやるのが一番、利用者さんたちの自立に光が当たるんではないか 」。
そして工賃のアップについても、繰り返してきました。工賃を上げて、自立して生きていけるようにするとのことだったと思います。

コーヒー1杯200円。
200円のコーヒーなんて買う人は少ないと、多くの人が見込んでいました。
そして市役所3階は主に議場でその他に会議室がありますが、階段を上って3階に着くと、そこには重い扉があります。
傍聴に来たのでもなければ、そのドアを開けて3階に足を踏み入れることは、おそらく多くの市民にとって躊躇いを感じます。
その躊躇いを振り払って、職員休憩室に行ってコーヒーを飲もう・飲みたいと思う市民も、決して多くはないでしょう。
そもそも、その扉を開けられたとしても、職員休憩室がどこにあるのか非常にわかりにくく、そこを歩き回って探そうとする人も絶対に少ないと思います。

あれから2年が過ぎました。
フレンドパークさんは今年3月末で、市役所でのパンとコーヒーの販売を撤退してしまいました。
多くの人が予想した通りでした。

昨日、フレンドパーク施設長さんと理事長さんにお話を伺いに行ってきました。
販売を始めた当初は、コーヒーは1日25~26杯くらい売れていたそうです。
でもすぐに販売数は尻下がりになり、昨年度は5~6杯程度になってしまい、
最後の方は、1杯も売れない日もちょこちょこあったそうです。
パンやクッキーの売れ行きも悪く、買ってくれるのはほとんどが職員という状況。
売れ残りそうになると、知り合いを見つけてお願いして買ってもらうような状況だったそうです。
はーとふる・ぽっとの時は月34~35万円あった売り上げがすっかり減ってしまい、利用者2名と非常勤職員1名で販売に行っていたそうですが、非常勤職員の給与にもならない状況だったとのことでした。
利用者さんががっかりした顔をして帰ってくるのが可愛そうで、市役所での販売をやめる決断に至ったというお話でした。

市役所入り口や老人センターでのパンの販売は続いていますし、フレンドパークさんにはその他に電化製品の解体の仕事など、地域の事業所さんから依頼されて実施している仕事があります。
こうした仕事の依頼が増えているそうです。
利用者さんに支払われる工賃は、平成27年度14,620円、28年度14,552円、成29年度17,701円、平成30年度16,675円 。
平成30年度は29年度より1,000円下がっていますが、27~28年度と比較すると2,000円くらい上がっています。
しかしそれは市役所3階でのパンとコーヒーの販売の効果ではなく、他の仕事の依頼が増えたことによるものだということが分かりました。

それでは多くの市民が驚き、反対の声をあげる中で進められた「はーとふる・ぽっと」の閉店、市役所でのパンとコーヒーの販売とは一体何だったのでしょうか。
誰のための施策で、一体誰が幸せになったのか。
利用者さんたちの自立に光が当たったのか。
工賃が上がって、障害を持ちながらも安心して自立して生きていくための力になったのか・・・。
今、改めて問われていると思います。

小林昭子元議員は、議会での質問の中でこう言いました。
「冷たい市政だなぁ」と。
本当に。