市のいじめ対策、いじめた子にもいじめられた子どもにも十分な教育的配慮を

2022年03月24日

3月議会の一般質問で私が取り組んだことの一つは「いじめ」の問題でした。

今年1月7日に、総合教育会議が開かれました。
議事録を読むと、市長から
「特に最近、発達に課題を抱えた子どもたちが加害者になっている事例が非常に多い。それも、ひとつのクラスの中に複数人いるので、学校の先生が一生懸命指導してもなかなかいじめや暴力的な行為が収まらなかったりという事例が本当に増えている」「被害を受けた子が学校に行かれないのに、加害をした子はずっと学校に行っていて、しかもなかなか先生の指導がそこに入っていかないという事例が、すごく増えてきている」との発言があり、議論を求められていました。
特に市長から「出席停止」という提案があったようには見えませんでしたが、その後市の「いじめの防止のための基本的計画」に「出席停止」を書き込む方向で議論が進められています。

「いじめられた子が学校に行けなくなったのに、いじめた側の子は学校に通っている」という話は、例えば不登校やいじめを扱った小説でも映画でもドラマでも、必ずと言っていいほど出てくる言葉だと思います。
実際にいじめを受けて学校に行けなくなったお子さんや、その保護者のみなさんにとっては「いじめさえなかったら」という、拭い難い思いがあることも十分わかる気がしています。
そしてまた、いじめた側のお子さんに対する対応が不十分ではということを多くの方が感じているのではないかとも思います。
いじめた側のお子さんに対する対応は、確かに考えるべき課題だと思います。
しかしそれが「出席停止」の文言を「いじめの防止のための基本的計画」に書き込むことなのかどうかと考えると、少し違和感を感じます。
それ以前に、何かなすべきことがあるのではないかと思うのです。

この疑問をスクールカウンセラーとして働く方々(勤務先は吉川市外)にぶつけてみると、「いじめた側のお子さんをカウンセラーに繋いでほしいと要望しているが、繋いでもらったことはほぼほぼない」とのお話をいただきました。
そこで私は一般質問で、いじめ案件の被害者・加害者双方をスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーに繋いだ実績を問いました。
市の答弁は、今年度はゼロ。昨年度は1件で、いじめられたお子さんを繋いだとのことでした。
繋いだケースが少ない理由として教育長は、
「スクールカウンセラーはいじめ事案が発生した時にタイムリーに、常にカウンセラーがいるというのは難しい。いるときに発生すれば組織で対応しているのできちっとそのメンバーの中に参加して、議論するということはしていると認識している」と答えました。
正直、この答弁はおかしいと思っています。
いじめがあったとき、まさしくその場に大人がいることなど、まずはないのではないでしょうか。
いじめはいじめられたお子さんにも、いじめてしまったお子さんにもケアが必要です。
いじめが発生したその場にまさに居合わせなくても、アフターケアはできるはずです。
まして市長が発言した通り、「発達に課題があり、先生の指導が入らない」お子さんが加害側であるケースが増えている」と言うのならなお、そのお子さんたちをケアし、課題を解きほぐし、その後の展開につなげる何らかの支援が必要なのだと思います。

タイムリーにカウンセラーがいなくても時間が経ってもカウンセラーに相談していただき、しっかりと専門的・教育的配慮・対応をしていただくことを求めました。

「1月の総合教育会議での出席停止のお話については、いじめ防止対策推進法第26条に明記されていることであり、教育委員のみなさまにもご意見を伺った。教育委員のみなさまは、出席停止の明記は必要だと思っている」。
「ただ、いじめてしまった側の人権、教育の保障の議論、これは必ず必要だと。またいじめてしまった側のお子さんをどれだけ支援してあげられるのか、そこにしっかりとした手当がなければだめ。さらにいじめてしまった側の人権というのは大変デリケートな問題だ、など様々なご意見をいただいた」。
「こういったご意見も踏まえて、出席停止についての判断はやはり慎重かつ適切に行っていくべきだと考えている。いじめが起きたら直ちに出席停止などということは、おそらく誰も考えていない。まずはしっかりと事実の確認をし、個別に応じた指導をしていくことが大事であり、いじめを生まない学校をしっかり作り上げる、そこに尽きると思っている」。
教育長のこの答弁には正直、ホッとしています。