市長発言の根拠は?

2023年03月26日

3月議会の一般質問で私が聞いたことに一つは、昨年1月7日に開催された吉川市総合教育会議において、「吉川市いじめの防止等のための基本的な方針について」の議題の中で、市長の発言についてでした。
会議では市長の発言に続いて、「吉川市いじめの防止等のための基本的な方針」に出席停止を書き込むか否かについて検討され、書き込む方針が確認されています。

市長の発言は

  1. 「いじめた加害者側の子の人権にすごく重きを置いてきた吉川市の流れがある」
  2. 「特に最近、発達に課題を抱えた子どもたちが加害者になっている事例が非常に多い。それも、ひとつのクラスの中に複数人いるので、学校の先生が一生懸命指導してもなかなかいじめや暴力的な行為が収まらなかったりという事例が本当に増えている」
  3. 「しかもなかなか先生の指導がそこに入っていかないという事例が、すごく増えてきている」

というものでした。
この発言に疑問を抱くのは、決して私一人ではないと思います。
吉川市のいじめ対策は、本当に加害者側の子の人権に「すごく」重きを置いてきたのでしょうか?
発達に課題を抱えたお子さんはどちらかというといじめのターゲットになりやすい印象があります。そうではなく、いじめる側に回るケースが「非常に多い」「本当に増えている」というのも違和感があります。
「先生の指導がなかなか入っていかない事例がすごく増えている」のならば、いじめ対策としてはが「出席停止」を書き込むより前にやるべきことがあるのではないか。
そういった疑問が尽きません。

私はこの点について、一般質問をしました。
答弁者として求めたのは市長・教育長・担当部長です。
ただ一般質問の数日前に同じ疑問を抱く市民のみなさんが、同じ問題で近々市長と懇談をする予定という事実を知り、邪魔をしてしまうといけないのであまり深く聞かないようにしようと思いながら、質問に臨みました。
なので、質問しきれていない部分があることは自分でも重々承知しています。
その上で、市の答弁をご紹介します。

驚いたのは市長の発言について聞いたのに、市長は「担当部長から答弁させます」と言っただけで何も答えなかったことです。
部長の答弁は

  1. 「いじめた加害者側の子の人権にすごく重きを置いてきた吉川市の流れがある」

    いじめについてはこれまでも被害児童生徒だけでなく、加害児童生徒に対しても人権に配慮してしっかりとケアしてき     た。
    いじめの根絶では加害者側へのアプローチもすごく重要。特に子どもの場合はその背景に虐待など家庭的な問題があるなど、その子自体に様々な葛藤を持っている場合が大変多いということは市の教育委員会としても十分認識しているので、被害者の救済が一番ではあるが、被害者だけに注目するのではなく 加害者の心のケアも大切にしていかなければいけないということを共通認識として持っていたということ。 

  2. 「特に最近、発達に課題を抱えた子どもたちが加害者になっている事例が非常に多い。それも、ひとつのクラスの中に複数人いるので、学校の先生が一生懸命指導してもなかなかいじめや暴力的な行為が収まらなかったりという事例が本当に増えている」
    ⇒昨今の教育現場において同様の事案が課題となっていることから発言されたもの。
     文科省が子ども家庭庁準備室と共同で設置した「いじめ防止対策に関する関係府庁省連絡会議」で議論された後に出された「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について」には「当該児童生徒が様々な背景を有している場合もあり」という文言が書かれている。
     ところがこの議論の参考資料として書かれた会議資料には、「いじめの背景に虐待や発達障がい等がある場合もあり」となっている。最終的に議論の中でそこが変更されたのだと思うが、国の中でもその背景にそれがあるということについては共通認識となっていると思う。

     国の資料によると通常学級で全体の7.7%にあたる子が発達障害の可能性があると言われており、35人学級で換算すれば2.7人。
    そう言った中で全国的な傾向としてお話されたと思う。

    発達障害のお子さんがいじめる側に回っているということを意味した文書なのかとの再質問には、「加害・被害については書かれていない。そういった事例が多々出ていることは事実」。 

この答弁からわかることは、吉川市のいじめ対策が決して「加害者側の人権に凄く重きが置かれてきた」わけではないということ。発達に課題のあるお子さんがいじめる側に回るケースも増えてきているという事実。ただ、加害なのか被害なのか量的なことははっきりとしていないということでだと思います。
市長の発言が決して事実を正しく表現したものとは思えず、こうした発言の後に市の「いじめの防止等のための基本的な方針」にいじめた側の子どもの出席停止という非常に重要な課題が検討され、決定されるといった事実を残念に思います。

ただ担当部長は「出席停止」についての挨拶ではなかった、今のいじめの状況について話しただけだというような答弁でした。

全体に納得のいく答弁ではありませんが、昨年10月27日に再度開かれた教育総合会議では議会での議論も加味しながら丁寧に検討された様子がわかり、ホッとしています。
一番納得できないのは市長の発言について質問をしたのに、あれだけ雄弁な市長が一言も答弁しなかったことです。
答弁しないという事実が雄弁に語るものがあると感じています。

写真は昨年3月議会のものです(昨年12月議会から、一般質問中の議員の写真撮影が議会広報委員会の提案により中止されたので)。