森鴎外『鼠坂』を読みました

2022年01月11日

先月、日本の近現代史を学ぶ会の学習会「明治の文学者と戦争」に参加して、森鴎外に興味を持ちました。
講師の澤田章子さんのお話では、森鴎外という方は軍医として上り詰め、権力者としての側面と同時に文学者として非常にナイーブな側面を持ち、矛盾を抱え、決して自分の人生を満足して終えた人ではなかったのでは・・・とのことでした。
戦地での強姦を批判し、彼の作品の中にはあからさまにではないけれど強姦を批判したものもあると、「鼠坂」を紹介されました。
早速買い求め、読んでみました。

読書量は多い方だと自負していますが、森鴎外は読んだことがありませんでした。
高校生の頃図書館で手にしてみたことはありましたが、文体も固く、漢字がやたらと多く、しかもその使い方が現代とは違っていたり、知らない言葉もたくさんあるし・・・。
とても読む気にはなれませんでした。
同じ明治の文豪でも夏目漱石や島崎藤村は読めたし好きだったのですが、森鴎外は・・・。

でも今回読んでみて、意外と読めることがわかりました。
この本はミステリー小説の短編集ですが、このままテレビ番組の「世にも不思議な物語」にでもしたら面白いのでは・・・と思うようなミステリアスな展開に、意外と興味をそそられました。
文学でも軍医・官僚としても大成功な人生を生きた人の思考過程が、意外と今をごくごく普通に生きる私たちと何も変わらないような部分を見つけたりして、面白かったです。
そして『鼠坂』は確かに強姦を批判した小説でした。
もし森鴎外が軍医でなかったら、もっとあからさまに批判するような、戦争というものに一石を投じるような作品が書けたのかもしれないなぁと思いながら読みました。

解説を読むと、三島由紀夫は「鴎外とは明治以来の山の手知識階級の知的アイドル」と評していて、「私の育ってきた時代には、『鴎外がわかる』ということが、文学上の趣味の目安になっており、漱石はもちろん文豪ではあるが、鴎外よりもずっとわかりやすい、『より通俗な』ものと考えられていた」らしいと書かれていました。
高校生だった私が、森鴎外が読めなかったのはごくごく当たり前の話だったと納得しました。

意外と面白かったので、時間ができたらまた違う本を読んでみようと思います。