生活保護の扶養照会のはなし

2021年03月05日

1月28日 、参議院予算委員会で日本共産党書記局長の小池晃氏は、生活保護を必要とする人が申請をためらう原因になっている扶養照会について、「扶養照会は義務ではない」という閣僚答弁を初めて引き出しました。
扶養照会と言うのは、戸籍情報を基に親や子・兄弟・孫にまで生活の援助ができるかどうかを問い合わせるものです。
できれば内緒にしておきたい自分の窮状を親族に晒す・・・。
誰だって、そんなことは避けたいものだと思います。
1月31日付しんぶん赤旗2面の記事によれば、

「生活困窮者を支援する一般社団法人「つくろい東京ファンド」の年末年始の調査では、生活が苦しいのに生活保護を利用したくないと答えた人のうち、3人に1人が「家族に知られるのが嫌」なのが理由だと回答。自由回答では「今の姿を娘に知られたくない」「家族に知られるのが一番のハードル」などの声が寄せられています。
同ファンドは「困窮者を生活保護制度から遠ざける不要で有害な扶養照会をやめてください」と求めています。
扶養照会は、2016年7月に生活保護を始めた1・7万世帯に関しては、計3・8万件も行われています。国民に植え付けられた"生活保護は恥"という意識や、自民党議員らが広げてきたバッシングも背景に、申請をためらってしまうのは目に見えています」とのこと。

申請者本人に辛い思いをさせて照会しても、実際に経済的な支援に結び付いたのはわずか1%程度であることも、この間明らかになってきました。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2021-01-31/2021013102_02_1.html
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2021-01-31/2021013102_02_1.html

2月26日、厚労省は通知を出しました。
厚労省はこれまで、照会をしなくて良いケースを「70歳以上の高齢者」「20年以上音信不通」等にとどめてきましたが、「10年程度の音信不通」と短縮しました。
更に、「相続で対立」「借金を重ねている」等「著しい関係不良」が加えられました。
しかし、そこまでです。
自分の窮状を身内に晒したくないという申請者の思いは、適用されません。

最近相談を受けた方は、親族から生活保護だけは絶対に受けるな、親戚に顔向けができなくなる、恥を晒すなと厳しく言われています。
失業し、コロナ禍で次の仕事を見つけることもできず、極端に食事を減らした生活の中でやせ細り、体力を失い、手元にはもうほとんどお金がない・・・!
そんな状況の中で暮らしています。

今日の文教福祉常任委員会で確認しました。
扶養照会は本人の承諾を得て行うとされていますが、実際のところ本人には拒否権はないそうです。
しかし扶養照会を拒否しても、保護の決定には関係ないということでした。
意味が分かりません。いったいどういうことなのでしょう?
①生活保護の受給は国民の権利として認められている。
②だけど、生活保護を受給するなら「扶養照会」は必ず必要であり、本人に拒否権はない。
③だけど、「扶養照会」は必ず本人の同意のもとに行われる。
・・・同意できない人は、そもそも申請ができないという意味に思えてしまいます。
それって、本当に生活保護の受給権を認めていることになるのでしょうか???

でも、今日の文教福祉常任委員会で私が最も理解したことは、生活保護が「法廷受託事務」だということでした。
法定受託事務とは、①国が本来果たすべき役割に係る事務であり、その適正な処理を国が法律や政令に特に定めるもの ② 必ず法律・政令により事務処理が義務付けられる
ものだそうです。
要するに、市は国の指針に従って事務処理をしなければならないということでしょうか。

とにかく扶養照会をするかしないか、市が独自に判断することはできない、国の指針に従って実施するしかない・・・。
生活保護を申請するなら扶養照会は受け入れざるを得ない・・・。
そういうことだと思います。

吉川市の人口は7万人余り。
困窮し、相談に来る市民の生活が見え、対処するには程よい規模だと感じます。
実際のところ、市の窓口はとても温かいし丁寧だと感じています。
職員にも一人一人の顔がちゃんと見え、その思いを受け止めながら支援できる規模なのだと思います。
そういう温かさを発揮しきれないのは、国の通知に問題があるからだと思います。

昨年、安倍前首相は「生活保護は権利」だと答弁しました。
菅首相だって、「最後には生活保護がある」と発言しました。
それならば困窮した人が安心して生活保護を受けることができるように、不必要な扶養照会はやめる、そういう判断をするべきだと思います。

今日の文教福祉常任委員会で分かったことのもう一つは、職員の皆さんも申請者と国の間の板挟みで大変だという事実でした。
職員の皆さんがこんな板挟みにならず、安心して仕事に励むことができるように、扶養照会の要件をもっともっと緩和する通達を出すべきだと思います。
そういうことを、国会議員に向けて働きかけていこうと強く思いました。