自民党改憲草案 憲法9条変えたらどうなる?

2023年01月25日

先日もお伝えしましたが、昨年11月に開催された9条の会@よしかわの学習会の続編をお伝えします。
学習会は、全日本民医連動画ページ・YouTube掲載の「白神優理子弁護士が語る『憲法9条 変えたらどうなる』を視聴してのものでした。

Q:具体的に自民党改憲草案はどういうもの?日本にどんな影響がある?

第二章 戦争の放棄
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行  使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

これが憲法9条です。自民党の改憲案は今ある憲法9条はそのままにして、次の条文を追加するというものです。

第9条の2(自民党改憲草案)
前条の規定は、我が国の独立と平和を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置を取ることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

「前条の規定」とは憲法9条のことです。
憲法9条は「戦力を持つな」と言っているけれども、改憲案では「集団的自衛権の行使」も含む「自衛」の措置を取ることを妨げない、集団的自衛権の行使を止めない、止められないと言っています。
つまり憲法9条に書き込まれる自衛隊は、日本が攻撃されていなくてもお友だちの国の戦争に前線まで行き武力を行使することに道を開き、殺し殺される自衛隊です。
憲法9条はなし崩しになり、日米安保条約のもと、アメリカの戦争に日本も自衛隊が強制的に参戦していくことになるのは明らかです。
故安倍元首相は国会でも「密接な関係のある他国とは主にアメリカ」と答弁しています。

Q:アメリカがしてきた戦争とは?

イラク戦争では、アメリカはイラクに「大量破壊兵器がある」と軍事侵攻しました。
しかし、アメリカ本国の調査でも大量破壊兵器がなかったことは明らかになりました。大義もない、何の正義もない、国際法違反の先制攻撃でした。戦後何度もアメリカは、こうした国際法違反の軍事侵攻をやっています。

このような戦争に自衛隊の若者が無理やり連れて行かれ、銃を撃たなければいけない状況に追い込まれます。
攻められている国にとっては、「日本に対して何もしていないのに日本が攻撃を仕掛け、家族が命を奪われていく」ということになります。日本も憎しみの対象となり、日本人だというだけでテロ攻撃のターゲットになっていく可能性があります。
自民党の改憲案はそういう内容です。

Q:軍事費2倍化の財源は?

自民党は軍事費を2倍に引き上げようとしています。
日本の軍事予算は5兆6千億円くらいで、2倍にすると12兆円近い数字になります。しかし税収が増えるわけではありませんから、当然社会保障を削るのは明らかです。
下の図は1兆円あれば、どれだけコロナ対策ができるかということが示されています。(出典:東京新聞)。

他にも労働基準監督官を増やしてブラック企業を規制し、法律に守られた人間らしい働き方を実現することができ、過労死も失くしていくことができます。最低賃金を時給1,500円以上に引き上げ、中小企業への支援にしっかりとお金を回し、景気の回にもつなげることができます。

改憲や軍事費の二倍化を私たちは望んでいません。一人ひとりのいのちや暮らしにこそ税金を使って政治家は仕事をしてくださいと憲法にも書いてあり、私たちもそれを望んでいます。
今大事なことは、今あるこの憲法をもっとしっかりと守って、生かしていく、そういうことにみんなで一緒に声をあげていくことが大切なんだとお伝えしたい。

あなたは愛される権利がある

憲法13条は日本国憲法の心臓部分、一番の核となる条文です。

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

「全ての人はそのままの姿で大事にされる、個人として尊重される」ということが書かれています。
一人ひとりの命や自由で幸せになっていく権利は、国の政治で一番大事にされると書かれています。「あなたは愛される権利がある」ということです。

例えば医療の現場は命を守る職場なのに、人が足りない、賃金が少ない、「これっておかしくないかなぁ」と疑問に感じたことを出し合い、憲法にはどのように書いてあるかを学ぶこと。
「何よりも社会保障、福祉を充実させなきゃいけないのが国の仕事なのに、憲法が守られてないところがあるんじゃないかなぁ」、逆に「今こうしたことを話していること自体が憲法の表現の自由で守られているんだ」など、一つ一つ自分の身近な疑問や意識・気付いたことを憲法に結び付けて考えてもらうのがいいんじゃないかと思います。
ジェンダー平等社会を実現するのも、戦争や格差や貧困をなくすのも、ブラック企業をなくしていってみんなが伸び伸びと自分のやりたいことをやって生きていける社会も、全部憲法を生かせば実現できる。そういうことをみんなで話し、お互いに気付きあっていければ良いと思います。

自民党の改憲案の危うさと今の憲法のすばらしさが良くわかる、とても大切な学習会でした。
岸田政権、とても危険な政権だと思っています。
軍事費の2倍化、安保3文書の閣議決定、社会保障費の削減、全部が一体となって日本を危険な方向へと進めようとしています。こういう政治をやめさせるために、ちゃんと学んでいかなくてはいけないと改めて強く思います。