認知症高齢者の見守り体制の強化を!

2021年03月24日

3月議会一般質問で、私が取り上げた問題の一つは認知症高齢者の行方不明・・・、見守りをどうするかという問題でした。

なぜ見守りネットワークに連絡がいかなかったのか・・・

この冬、冷たい雨が降りしきる夜、一人の認知症高齢者が行方不明になりました。
私たちがそれを知り、探し始めたのは夕方5時ころからだったと思います。
いなくなったのは4時ころのようでした。
私たち友人・知人も探し回りましたが、日の短い季節で、しかも雨足も強く、車のライトの反射がとても強く、探すことはとても困難でした。
ご家族が警察に連絡したのは6時過ぎだったと思います。
そして7時ころには、警察がご自宅に訪問していることを確認しました。
その方が見つかったのは夜中の2時過ぎでした。
認知症がそれなりに重いと思われる方ですが、その時はコンビニの店員さんにご自宅の電話番号を言うことができ、店員さんにご家族に電話を入れていただき、ようやく発見された次第でした。
ご家族が迎えに行ったとき、10時間歩き続けた脚はパンパンに腫れあがり、全身冷え切っていたとのことでした。

その日、行方不明者を伝える防災無線放送は流れませんでした。
市の要援護者等見守りネットワークへの連絡もされませんでした。
その理由について、問いました。

市の答弁は、こうでした。
警察から市に連絡が来たのが7時50分。
夜8時以降防災無線は控えることとなっているため流さなかったとのことでした。
「防災無線を流さない場合でも、見守りネットワークに繋げるなど様々な方法はあったかと思う」「捜索を依頼している方の気持ちになった形で、より良い運用ができるよう改善をしていきたい」とも答弁しました。

その方のご家族は、家を出る時に差して行った傘と発見したときに持っていた傘が違っていたと話してくださいました。
どういうことかと考えると、おそらくその方は外出した目的を忘れてしまい、方向も見失ってしまった中で、とても不安な気持ちで徘徊を続けたのだと思います。
そして歩き回りながら、救けを求めていくつかの店舗・コンビニ等に立ち寄ったのだと思います。
でも救けてもらうべき言葉も見失ってしまい、求めることができなかったのではないでしょうか。
諦めてそのお店を出る時に、差してきた傘も忘れてしまったので、別の誰かの傘を差してまた歩き出した・・・。
そんなことを何度か繰り返したのではないでしょうか。
この時、もし見守りネットワークを介してコンビニなどの店舗に情報が届いていたら、誰かが「様子がおかしい」と気付いて、もっと早く発見できた可能性は高いと思います。
見守りネットワークへの連絡が、とても大切だと思います。

市民生活部長の答弁は、「防災無線を流さない状況であっても次に対応するべきところがないか、今確認している」「警察から危機管理課が連絡を受けた後、そのケースごとに地域福祉課・長寿支援課・子育て支援課・学校教育課・障害福祉課に連絡を取り繋げていくわけだが、福祉部局の担当者との連絡窓口の整備・再確認は必要」「見守りネットワークの担当は地域福祉だが、時間制限など、捜索を依頼している方の気持ちになった形で運用できるように点検をし、できるものは改善をしていきたい」と答えました。

市内全てのコンビニ・ドラッグストア・スーパーなどに協力要請を

市の見守りネットワークの協力事業者は、介護事業所や交通機関、郵便局やコンビニなどの店舗などが多いように思われます。
しかし、認知症高齢者の方が行方不明になりやすい時間帯は夕方以降と以前から指摘されています。
夕方5時を過ぎても営業を続ける、そして高齢者にとって立ち寄りやすい店舗の協力を求めることが不可欠だと思います。
市内のすべてのコンビニや深夜まで営業しているドラッグストア、スーパーなどに見守りネットワークへのご協力をお願いするべきです。
市の見解を問いました。

こども副支部長は、「令和3年2月末現在95の事業所にご協力をいただき、コンビニも15店舗から協力をいただいている」と答えました。
全てではないので、一店舗でも多くご協力いただけるようお声かけしていくとも答えました。

位置情報提供サービスは様々なバリエーションで

市では現在、加入料3,000円で位置情報提供サービスを実施しています。
ペンダント式のGPSですが、もともとペンダントを身につける習慣のない方には実用的ではありません。
GPS機能付きの見守りシューズなども最近は出ています。
靴なら出かける時は必ず履いて出ますし、万が一履かずに歩いていたら周りの人が異変に気が付くはずです。

また、横浜市では見守りが必要な方との注意喚起を促すアイロンで張り付けられるシールを交付しています。

本人が自ら救助を求めることが困難な認知症高齢者を探す、見つけるための実用的なサポートを実施するよう要望しました。

事前登録制の導入を

他市では徘徊リスクの高い高齢者を地域包括支援センターなどに事前登録し、行方が分からなくなったら警察とセンターの両方に通報する仕組みを作っているところが多くあります。
警察と市との連絡のやり取りでのタイムロスを防ぐためにも有効です。
また地域包括支援センターなら当事者の方をよく知っている可能性も高く、例えば初動の時から市外も含めて捜索するなど、その方の特性に応じた捜索が可能になると思われます。
地域包括支援センターの負担が増えることになるとしたら、抵抗を感じます。
それでも、事前登録制の方がスムーズな捜索ができると思います。
事前登録制の導入について、検討するよう要望しました。

昨年7月の警察庁の発表によると、2019年に認知症が原因で警察に行方不明届が提出された人は前年より552人増え、1万7479人でした。
7年連続で過去最多を更新し、統計を取り始めた12年と比べ1.8倍に増えました。
家族や警察の捜索により7割は受理当日に、また1週間以内に99%が発見されているそうです。
が、死亡した状態で発見された方も460人に上りました。
認知症高齢者の方の行方不明はいのちに関わる大問題です。
できるだけ早く発見することができるよう、体制を強化することが求められています。

桜美林大学老年学総合研究所・鈴木孝雄教授の『認知症高齢者の徘徊・行方不明・死亡に関する研究』によれば、行方不明から9時間以上を経過すると発見率は徐々に下がり、死亡につながるケースがあることなども報告されています。