『世界一孤独な日本のオジサン』

2020年03月22日

今日読んだのは、『世界一孤独な日本のオジサン』(岡本純子著 角川新書)です。
Amazonで他の本を注文したときにたまたま見つけ、題名に惹かれて衝動買いした本でした。
よく言われる、高齢男性の「ぬれ落ち葉」的な話かなぁと思って読み始めましたが、全然違いました。もっと「孤独」について科学的に、社会学的に、国際的な視点からとらえて書かれていて、おもしろかったです。

「社会的孤立が私たちを死に追いやる」(ニューヨーク・タイムズ)、「中高年にとって最大の脅威は喫煙でも肥満でもない。それは孤独だ」(ボストン・グローブ)、「慢性的な孤独は現代の伝染病」(フォーチュン誌)。
日本ではあまり話題になっていませんが、世界の主要メディアではこうした報道がこの数年、頻繁に登場するようになったそうです。
今、世界で、人々の精神的・肉体的健康上、最も憂慮すべき問題として語られているのが「孤独」とのことです。
オバマ大統領の下でアメリカ連邦政府の公衆衛生局長官を務めたビベッグ・マーシーという方は、「孤独は深刻化する伝染病であり、その対処は喫緊の課題」という論文を発表し、「病気になる人々を観察し続けてきてわかったが、その共通した病理は心臓病でも糖尿病でもなかった。それは孤独だった」と訴えたそうです。
同じくアメリカのぶりがムヤング大学のホルトランスタッド教授は、2010年、148の研究、30万人以上のデータを分析した結果、「社会的なつながりを持つ人は、持たない人に比べて、早期死亡リスクが50%低下する」と発表しました。


孤独による健康への悪影響は様々に研究されていて、

  • 孤独は冠動脈性の心疾患リスクを29%上げ、心臓発作のリスクを32%上昇させる。
  • 孤独な人はそうでない人より20%早いペースで認知機能が衰える。

  • 孤独度が高い人がアルツハイマーになるリスクは、孤独度が低い人の2.1倍。

  • 孤独は体重減少や運動による血圧低下効果を相殺する負の効果を持つ。

  • 孤独な人は、日常生活、例えば入浴・着替え・階段の上り下りや歩くことにも支障をきたしやすくなる。

孤独は世界共通の問題ですが、日本の孤独の深刻度は世界の中でも群を抜いていて、日本は「孤独大国」だとしています。
「心から信頼でき、頼ることのできる人たちと、深く、意味のあるつながりや関係性を築いているかどうか」。
そういった意味で、「孤独」は日本の深刻な「国民病」だとしています。
その背景には、日本社会の「繋がりの低下」があるとしています。
そして、その中でも特に高齢男性が社会から孤立しています

その原因の一つに「ジェンダー」の問題を著者は挙げています。
「男は黙ってサッポロビール」のCMが人気になり、また高倉健のような無口で群れない人が男らしく、究極的にかっこいい、そんな固定観念が根強い・・・。
この「男らしさ」こそが孤独の元凶との見方もあると、ある社会学者の「孤独や空虚感、繋がりの欠落、共感や思いやりの抑圧を生み出すレシピ」との言葉を紹介しています。

私たちは「ジェンダー平等社会の真の実現」などという言葉を、よく使います。
私たちが女性であるが故に、「女性」としての性的分業を求められることには、強くきっぱりと抵抗することができます。
でももしかしたら、男性に対して「男らしさ」という「性的分業」については、案外気付かずに求めてしまっているのかもしれません。
こうした状況を変えていかないと、日本の高齢男性の「孤独」の克服はできないのかもしれません。
「男らしさ」「女らしさ」ではない、お互いにひとりの人間として自由に繋がり合える社会をつくっていく・・・。
それが豊かな高齢期をつくっていくことになり、また高齢者の健康を支えることにもなる・・・。

難しい課題を与えられたような気がします💦