『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』

2022年07月02日

凄い本を読みました。
『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』(井上荒野著 朝日新聞出版)。

ある性暴力の告発と、それに関わる様々な人々の様々な思いを描き出しています。
男性の立場から考えると「この場についてきたのだからごくごく当たり前のこと」と、暴力をふるったわけでも恫喝したわけでもなく、相手も表面的には決して拒みはしなかった性的な関係。
しかし女性の立場からすると、恋愛関係にもなく同意もなく、相手との力関係の中で強制力があり、いやでたまらないのに声をあげることすらできない関係。
告発された男性の妻や娘は何を思うのか。
告発した女性のパートナーや仲間は何を思うのか。
同じような立場を強いられながら甘受している女性たちは何を思うのか。
とても息苦しくリアルな描写です。
「セクシャルハラスメント」の本質が、鋭く描き出されているように感じる作品です。 

こういう本を読むたびに、私にも思い出す光景があります。
「ご飯を食べに行こう」と誘われ、本当にご飯を食べに行くのだと思ってついていったことが相手にとっては全く別の意味を持っていた・・・(@ ̄□ ̄@;)!!
私は何とか逃れられたけど、あの時の不快な光景と言葉は今でもはっきりと覚えています。
多分そういう体験をした女性は、非常に多いのではないかと思います。
そして非常に多くの女性が、女性の認識と男性の認識のあまりの違いに驚いているのではないでしょうか。
その驚きに、男性は全く気付いていない・・・(@ ̄□ ̄@;)!!これもまた現実かもしれません。

見て見ぬふりをする女性も、甘受する女性も、声をあげる女性も、みんなそれぞれに苦しんでいると感じます。
どうしたら自分の尊厳を保てるのか、自分が自分でいられるために自分はどうあるべきなのか・・・。
「性」という問題に関して、どう考えても今の社会は男性の方が強く、女性の方が弱い。
じゃぁ、男性の理論の中で女性は我慢だけを強いられ、我慢できないことを人間として恥ずべきことのように扱われて良いのか。

どちらが優位かではなく、お互いに何を考えているのか、どうしたいのか、OKなのかNOなのか正面から語り合うことができ、理解しあって前に進めるような社会になると良いのだけれど。