『隠れ貧困』

2020年03月20日

今日読んだ本は『隠れ貧困』(荻原博子著 朝日新書)です。
荻原博子さんはテレビにも時々登場する経済ジャーナリストです。流石に、とても分かりやすい本でした。

貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」があります。
「絶対的貧困」とは1日1.25米ドル未満で生活しなくてはならず、食べることにも事欠く貧しさを言います。
一方の「相対的貧困」という言葉は、近年よくいろんなところに登場する言葉です。
国民の所得分布の中央値の半分に満たない世帯、その国の「平均的収入の半分以下」で暮らす世帯を指します。
日本ではこの「相対的貧困率」が年々上昇しています。
統計を取り始めた1985年には、日本の「相対的貧困率」は12%でした。それがジワジワト増え続け、2012年には16.1%まで上昇しました。
6世帯に1世帯が「相対的貧困」状況にあるということであり、日本の「相対的貧困率」はOECD加盟34か国の中でもワースト10に入っています。

貧困の広がりとともに、数字には表れてこない「貧困予備軍」の数も増えていることが予想されています。
その根拠は、今、日本の家庭の約3割が貯蓄のできない状況にあるということです。
金融広報中央委員会の調べでは、貯蓄ゼロの家庭は現在30.9%もあります。

貯蓄ができないのは所得の低い世帯の問題だけではありません。
2000年代に入って、毎年のように増税や社会保険料アップが繰り返され、その分同じ年収なら手取りが減っています。
年金保険料だけでも毎年約1万円ずつ値上がりをしていて、この10年で10万円いじょうねあがりしています。
2016年から16歳未満の子ども扶養控除が廃止になり、年収800万円の家庭の場合、年間約22万円の負担増になっています。
この他に消費税のアップや復興増税まで加えると、年間50万円以上の負担増になっています。

給与は右肩下がりなのに、子どもの教育費は右肩上がりで増えていきます。
そして、年々厳しくなる生活に親の介護がのしかかります。
また過剰な仕事のストレスの中で、うつ病を発症する40代も増えています。

こうした中で、老後の準備をはじめなくてはいけないはずの40代50代が貯蓄もできないままに、住宅ローンという負債を抱えながら60代に突入していく・・・。
60代には予期せぬ病気や怪我や様々な出費があり、現役時代にはそれなりの収入があった人々でも貧困に陥って行かざるを得ない・・・。
今、そんな社会状況にあると荻原さんは指摘しています。

本の後半部分は、貧困に陥らないための具体的な対策などが詳しく紹介されています。
なるほど!と思い当たる部分もたくさんあり、学ぶことの多いコーナーになっています。

この本を読んで改めて思うのは、政府の政策の失敗です。
40代50代でしっかりと老後の準備ができるだけの貯えを可能にする、そうでなければ老後の保障をしっかりと充実させて、お金がなくてもどんな人でも老後を楽しく幸せに生きることができるように保障する、そういう政策が求められているのではないでしょうか。
貯金はさせない、老後の生活は自己責任。
こんな政治で良いはずがありません。
国民を「生かさず殺さず」みたいな、そんな状況に追い込む政治は間違っていると感じます。