3度目の『あの少女の隣に』

2023年02月05日

「また行ったんですか?」「もう3回目じゃないですか?」「ストーカーですか?」と笑われそうで怖いのですが、また行ってしまいました💦
くるみざわしんさん作 川口龍さん出演、『あの少女の隣に』下高井戸公演です。21年11月西荻・22年11月両国に次いで、3回目の舞台鑑賞でした。

今回がこれまでと違うのは、所属しているいくつかの団体にこの舞台公演に取り組まないかと提案をしていて、取り組むことを前提に、企画者としての目でも見させていただいたということです。
3回の舞台はそれぞれに少しずつ違っていて、私はてっきり脚本を少しずつ直しているのだろうと思ってしまいましたが、くるみざわさんにお聞きして、脚本は全部同じだということが分かりました。
一つはもう3回目なので、自分が気付くところが違うのだとは思います。
がもう一つは、どんな会場でどんな照明・どんな音響かということで、お芝居が違って見えるということが分かりました。お芝居というのは、とても繊細なものだということが分かりました。

この舞台は「国家管理売春」、国家的な性の搾取・性暴力に焦点を当てた作品です。
国にとっては常に困窮した女性が必要で、その女性たちに身体を売らせることによって国の体制を維持。表向きは女性たちを取り締まり、女性たちを批判する声に対しては「困ったものだ」と言うだけでいい。
国家にとっては困窮した女性は常に必要で、それが現代の女性の給与の低さや地位の低さに繋がっている・・・。
慰安婦の問題とジェンダー問題は一つに繋がった、全く同じ問題なのだと明確に訴えていると思います。

それにしてもスゴイと思うのは、こうした問題を演劇として表現しているところです。
同じような問題を明らかにし、問いかける本や講演会はそれなりにたくさんあると思います。
が、難しすぎて読めないし、聞きに行ってもやはり難しくてよく分かりません。そもそもその本を手に取ったり、講演に足を運ぶにはハードルが高すぎるような気がします。
が、芝居という形で見せつけられると、すんなりと心の中に入ってくるのです。
そして膨大にあふれ出すセリフの中にちょっとした「間」が置かれ問いかけられると、否応なく考えさせられるのです。
慰安婦やRAA(進駐軍のための慰安施設)で働かされた女性たち一人ひとりの悲しさや苦しさを表現するのではなく、「国家管理売春」の仕組みをあぶり出すことによって、「こんな社会で良いのか?」と観客に問いかける作品。
スゴイと思います。

1954年2月、小学校4年生の女の子がアメリカ兵により強姦され、4歳の女の子まで強姦される。
そして基地の近くに慰安所をつくらなければ、もっとたくさんの小学4年生、4歳の女の子が・・・。
胸が苦しくなるようなセリフの後に語られた、「貧乏な女がパンパンしなくてもするような国を作ってみやがれ」とのセリフが胸に迫ります。
一つ笑えるのは、今の大学生は奨学金という名前の「前借金」を借りて大学に進学している状況を、「文科省も似たようなことをしてるんだなぁ」と皮肉るセリフです。
とにかく素晴らしい作品だと思います。
本当に公演会を実現させたいと思っています。もし実現の運びとなったときには改めてお知らせしたいと思います。よろしくお願いします。