「個人情報の保護に関する法律施行条例」
12月議会には、「個人情報の保護に関する法律施行条例」が提案されました。
国会で「個人情報保護に関する法律」が改正され地方自治体にこの法律が2023年度より直接適用されることとなり。提案されたものです。各自治体にはこれまで持っていた個人情報保護条例を廃止し、全国共通ルールの「法律施行条例」として置き換えることが求められました。
しかし、そもそも国が全国共通ルールを地方自治体に求めること自体が地方自治への侵害ではないでしょうか。
2003年に個人情報保護法が成立する以前から、各自治体はそれぞれに個人情報の取り扱いについてルールを定めていました。事実、吉川市の個人情報保護条例がつくられたのは、個人情報保護法より前の2000年10月のことです。こうした事情から、国の法律以上の規定を定めた自治体が多いと言われています。それを破棄して全国共通ルールに基づく運用を自治体に求めること自体が、地方自治を無視した非常に乱暴なやり方だと思うのです。
本会議での私の質問に対し、市は「個人情報の開示方法や手数料については、ほぼこれまでと変わらない」「漏洩など特段の支障はない」と答弁しました。
本当にそうでしょうか?
「吉川市個人情報保護条例」は第一条に、「個人の権利利益の保護を図り、もって公正な市政の推進に寄与することを目的とする」と記しています。一方今回上程された法律施行条例の目的は「個人情報保護に関する法律の施行に関し必要な事項を定める」です。「個人の権利利益の保護」の視点を欠いた運用がこれまでと変わらないとはとても思えません。
数日前、東京新聞は「2017年度から21年度までの5年間で、企業や行政機関からマイナンバー情報が紛失・漏洩したとの報告が少なくとも約3万5千人分に昇る」と報道しました。市は私の質問に対し、「セキュリティポリシーを定め、民間事業者にもしっかりと指導していく」と答弁されました。しかし民間事業者が市のセキュリティポリシーを本気で守りながら事業を実施していくのか、その保証がありません。
こうした問題をどのように考えるのか、見解も対策もない中で法の施行だけを優先する国の姿勢も納得できるものではありません。
今回の個人情報保護法改正と全国共通ルール化の最大の目的は、行政が持っている個人情報を非識別加工して民間事業者の利活用に提供する、非識別加工情報の制度を広げることだと言われています。
今回は県と人口50万人以上の政令指定都市にこの提供が義務化され、それ以外の自治体は義務の対象にはなっていません。吉川市も「導入を見送ることとした」そうです。市の慎重な姿勢は、とても嬉しく思います。
が、法の目的から考えれば、今回対象とされなかった自治体にも近い将来義務化されることは火を見るよりも明らかだと思います。
非識別加工・・・つまりそれが誰なのかわからないように加工して、そして民間事業者の利活用に提供する💦
これまで「保護」の対象としてきた個人情報がが、民間事業者の利活用、つまり商売のタネとなるということですよね。
私たち日本共産党吉川市議員団はこの条例に反対しました。
確かに国が全国一斉にルール化を求めたものを、一つの市議会の小さな会派が抗ったところでどうこうなるものでもないのかもしれません。それでも反対の姿勢を示しておくことには意義があるものと思い、反対しました。