「加齢性難聴の補聴器購入に市の助成を求める請願」文教福祉常任委員会で採択

2022年03月11日

「加齢性難聴者の補聴器購入に市の助成を求める請願」、今日の文教福祉常任委員会での私の発言は以下のようなものでした。

「聞こえの保障」は認知症予防

請願理由にも記されていますが、厚労省の『認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)』には「難聴は認知症の危険因子」と明記されています。
2011年、米国で約600人に対して行われた研究結果では難聴のない人に比べ、認知症発症の割合は軽度難聴で2倍、中等度難聴では3倍でした。
2017年、国際アルツハイマー病会議は「難聴は認知症の最大の危険因子」とし、更に2020年委は「予防可能な40%の12の要因の中で、認知症は最も大きな危険因子」と指摘しました。
難聴のために音の刺激や脳に伝えられる情報量が少ない状態にさらされることで、脳の萎縮や神経細胞の脆弱化が進み、それが認知症の発症に大きく影響することが明らかになってきています。
昨今では、難聴を補正し「良い聞こえ」を維持することが認知症予防につながると考えられています。

社会参加を阻害する難聴は「フレイル」「介護予防」の危険因子

今、高齢者の介護予防で最も注目されているのは「フレイル予防」です。「フレイル」とは「健康」と「要介護」の中間にある「虚弱」な状態で、フレイルを予防することで要介護状態に陥ることを予防するという考え方が「フレイル予防」です。
「フレイル」を予防するための3つの要素は、「栄養」「身体活動」「社会参加」と言われています。
中でも「社会参加」は「フレイル」の入り口と言われ、高齢者の社会参加が「フレイル」や「要介護状態」の予防に大変重要な要素です。

高齢者の難聴は単に「聞こえない」というだけでなく、聞き取れないことから他者とのコミュニケーションが困難になり、他者との会話を諦め、社会から孤立を招きます。
その結果として、フレイルの扉を自らこじ開けてしまうことになり、フレイルへ、そしてやがては要介護状態への階段を上っていく非常に大きなリスク要因と考えます。

補聴器使用は生活の質の改善にもつながる

日本医療研究開発機構(AMED)の支援により、国内7大学病院で補聴器外来を受診したシニア層を対象とした調査が実施されました。その結果がインターネットでも公表されています。
補聴器を使用する前に「家族と話すとき、聞こえにくくてイライラしますか」や「何人かで話すとき、聞こえが悪いために取り残されている感じや疎外感を感じることがありますか」などに「はい」「ときどき」としていた回答が、補聴器導入後6ヶ月で軽減したという結果が得られています。
また、補聴器を使うようになってから、健康・スポーツや地域行事などの社会活動に参加する機会が増えたという結果も出ています。
聞こえの力を活用して人や社会とのつながりを保ち、会話を楽しみ、活動の範囲が小さくならないように心がけることが、フレイル予防にも有効だと報告しています。
また同調査で、補聴器所有者の89%が補聴器の使用により生活の質(QOL=Quality Of Life)が改善したと答えています。
具体的には、「安心感」「会話のしやすさ」「自分自身の気持ち」などです。
「自動車の近づく音、横断歩道を渡る時の信号音がよく聞こえるようになり、街中を安心して歩けるようになった」との質問に「はい」と答えた方は70%に上り、補聴器の使用の有無がうつ病の発症にも影響するとみられる結果も示されています。

https://www.hochouki.com/files/JAPAN_Trak_2018_report.pdf
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補聴器が必要なのに経済的理由で買えない人も多い現実

さらに日本には約1,900万人の難聴者がいますが、補聴器を使用している人は18%に過ぎないとも報告されています。
聴力の低下を自覚していない人が47%、自覚していても補聴器をしていない人が35%です。
調査対象者の24%が補聴器を使用しない理由として「購入する経済的余裕がないから」と答えており、本来補聴器が必要な方の4分の1にも及ぶ方々が経済的理由で補聴器を購入できない実態が改めて明らかにされました。
購入する経済的余裕のない方に購入費用を助成することの重要性を改めて指し示す調査結果です。

費用助成に留まらない、制度設計もとっても大事

ただし購入費用を助成するうえでは、しっかりとした制度設計をすることも重要だと考えています。
同調査では補聴器専門店で購入した補聴器は他の場所で購入したものより満足度が高く、インターネットで購入した補聴器の満足度は著しく低いとの報告もされています。インターネットで購入した補聴器は「タンス補聴器」となっているとも報告しています。
補聴器の必要性の有無についての医師の診断、補聴器専門店で認定補聴器技能者のサポート、また補聴器装着後のトレーニングやアフターケアが十分に行われてこそ、補聴器装着の効果が発揮されると考えられています。
こうした制度設計が十分に検討されることへの期待も込めて、加齢性難聴者の補聴器購入に市の助成を求める請願に賛成します。

https://www.hochouki.com/files/JAPAN_Trak_2018_report.pdf
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