「噫(ああ)従軍慰安婦」の碑

2025年02月02日

房総半島に行くと決めて、絶対に行こうと思ったのが、「かにた婦人の村」の丘の上にある「噫(ああ)従軍慰安婦」の碑です。

「従軍慰安婦」というと朝鮮半島の女性が犠牲になったと思っている方も多いようですが、最も多かったのは日本人女性でした。
そしてその女性たちの中で、自身の被害を申し出ることができた人はほとんどいません。
そういう中で、韓国人の金学順(キムハクスン)さんが元「慰安婦」であったと名乗り出た1993年よりも前の70年代に、自ら名乗り出たのが城田すず子さんでした。

城田さんが残した本があります。
『マリヤの賛歌』です。
私はこの本を数年前に読みましたが、城田さんの人生は壮絶でした。
「慰安婦」という身体的にも精神的にも過酷な環境で生きた城田さんは、戦後しばらくの間自暴自棄な人生を送りました。
しかしたまたま読んだ週刊誌で同じような女性の更生施設の存在を知り、入寮。生き直すことができました。
ラジオにも出演して、ご自身の体験を語られました。
今もラジオ局にはその時の音声が残されていると聞いています。

城田すず子さんは、様々な経験を持つ女性たちがともに暮らしながらパンを焼いたりして自立して生きていくことのできる施設の建設を願いました。
それが結実したのが「かにた婦人の村」です。
「かにた婦人の村」は全国で唯一、困難を抱えた女性の長期的受け入れを行っている施設です。

「噫(ああ)従軍慰安婦」の碑の建立も、城田さんが心から願って建立されたものです。
依頼を受けた深津文雄牧師が、二度と同じ過ちを犯してはならないとして建立したのです。
「かにた婦人の丘の上にある」と聞いていましたが、実際には「丘」というような生易しい場ではなく、息切れしながらようやくたどり着きました。
見られて良かったです。
海に向かって、同じように苦しむ女性たちに「みんな、ここへおいで」と呼び掛けているように立っていました。

今年7月21日(月・海の日)、吉川中央公民館でくるみざわしんさん作『マリヤの賛歌-石の叫び』公演を開催します。
城田すず子さんと、この碑を描いた作品です。ぜひ観に来てください。よろしくお願いします。