「若年がん患者支援制度」、吉川でもぜひ創設を!

2021年03月21日

3月議会の一般質問で取り上げた問題の一つは、「若年がん患者支援制度」でした。

若年がん患者の在宅療養支援制度創設の意義

2月11日、さいたま市が「若年がん患者が住み慣れた自宅で最期まで日常生活を送ることができるように」と在宅療養支援制度を創設することが報じられました。
市内在住の20~39歳の末期がん患者で在宅生活の支援や介護が必要な人を対象に、訪問介護・訪問入浴介護・介護用ベッドや車いすなどの福祉用具貸与等、1カ月につき上限8万円。そのうちの9割を補助するとのことです。
ポータブルトイレやシャワー椅子など福祉用具の購入にも、10万円を限度に助成する方向とのことです。
若年がん患者さんは介護保険の対象外であり、在宅療養を選択してもそれを支援する公的仕組みがありません。
若くしてがんを患い、終末を迎えざるを得ない方々に対し、在宅療養を支援する仕組みを作ることは非常に重要だと考えます。
吉川市でもぜひ、「若年がん患者支援制度」を創設するように要望しました。

吉川市とはかなり人口規模の違うさいたま市でも、2016年が27人、17年が24人、18年が18人。在宅療養者はそれぞれ3人 4人、3人という状況だったそうです。
吉川市では2017年に1人だったそうです。
制度を創設しても、利用する方が決して多いわけではないと思います。
予算も10万円とか20万円とか、そんなに大きくとらなくても賄えるような事業だと思います。
それでも制度を作っておけば、若くしてがんを発症し、そのがんによって終末期を迎えなくてはならない状況に追い込まれた方々に「帰っておいで」「最期まで支えるよ」という温かいメッセージになると思います。
今の医療は決して長くは入院させてくれません。
若くしてがんを患う皆さんに対しても、それは同じです。
何の支援もない中で、自宅に戻り、終末を迎える方々が少なからずいらっしゃいます。

私が出会った若年がん患者さんたちの在宅療養生活の現実

私も訪問看護の仕事の中で、何人かの若い終末期の方々にお会いしました。
20歳を超えたばかりの若い女性が、自宅で終末期を迎えたのは蒸し暑さの最も激しい7月でした。
自分の体臭が気になる年頃です。
ご家族は、せめて最期にお風呂に入れてあげたいと望んでいました。
しかし、衰弱したその方をお風呂に入れて差し上げるために、お風呂までお連れする車いす、お風呂で使うシャワーチェアーや手すりといったものを整えることができず、危険な状況でお風呂にお入れするわけにもいかず、結局諦めるしかありませんでした。

もう一人の20代の女性は、がんが下肢リンパ節に転移していました。
そのために両足がパンパンに腫れあがり、脚を曲げるにも、トイレに行くのにも大変な苦労をしていました。
でも20代の女性です。
どんな状況であっても、自分の力でトイレに行きたいと願うのは当然です。
しかし介護保険の対象ではないので、起き上がりを支援する電動ベッドや、トイレまでの歩行を支援する手すりの設置などができず、諦めておむつで排泄するしかありませんでした。

30代の若い男性は、妻と二人の子どもがいました。
夫婦での最期の時間を大切にしたいと、男性もパートナーである奥様も二人ともがそう思っていました。
しかし幼児を抱えた二人は子どもの世話に翻弄され、互いをいたわり合い、最期の時間を共に過ごすようなゆとりはどこにもありませんでした。
2人の子どもの保育を含めたホームヘルプサービスがあったら、二人の気持ちはどんなに癒されたことでしょうか。

ちょっとした支援があるかないかによって、最期の時間の過ごし方、意義は全然違うものになると思います。
支援が必要だと思います。

市の冷たい答弁

市の答弁はこうでした。
「どのような病気でも生活をされる上で様々な困りごとが発生する。様々な病気やご家族の事情などで色々な困りごとが発生し、また同じ病気でも生活の状況も困りごとも、個々に希望される支援内容も違う。市ではがんか否かに関わらず、どのような病気でも相談があればその困りごとをお聞きし、状況に応じて福祉をはじめとした行政サービスをご案内していく」。
なんという冷たい答弁でしょう。
がんか否かに関わらず、どんな病気であっても終末期を迎えざるを得ない状況に陥れば、生活の様々な困難さが生まれるという認識には全く依存はありません。
その通りだと思います。
それならば、がんか否かに関わらずどんな病気の人でも終末期をより良いものとできるように支援するという意味なのかと聞き返したら、決してそういう意味ではありませんでした。
下の画像は市のホームページ、健康・福祉のページのスクリーンショットです。

このサービスの中で、介護保険の対象にならない20~39歳のがん末期患者さんを含む終末期を迎える方々が利用できる在宅支援サービスはありません。

「愛する家族への思い、無念、そうした思いは十分理解しているつもり。在宅で終末を迎えたいという思いも十分理解している。国の方でがん推進対策計画を策定している。その中で在宅療養の支援の在り方を検討していくとある。国や県の動向を注視していく」との答弁もありました。
確かに、2012年国立がん研究センター中央病院がまとめた「若年がん患者を取り巻くがん診療・緩和治療支援の政策提言に資する研究」の中で、「40歳未満の若年がん患者の約10%は在宅死亡。終末期を家庭・家族と過ごすのに40歳以上の末期がん患者が利用できる介護保険による支援サービスの対象でない患者層であることが明らかであり、年齢による支援制度の欠落は改善の余地がある」と報告されています。
それから8年も経過した中で、今なお国の制度が何ら作られない現状の中で、さいたま市のように独自に制度を始めた自治体が出てきているのだと思います。
吉川市でも国や県の動向を注視するのではなく、積極的に取り組んでいただきたいと思います。
大したお金がかかるわけではなく、それでも終末期を迎えざるを得ない方々に「帰っておいで」「ちゃんと支援するよ」という温かいメッセージになるはずです。
そういう温かい施策の実施を、強く求めていきたいと思っています。