「領土」「領空」「領海」とはどこまでか?
共産党吉川市議団は毎週金曜日、元社会科教員の方にご協力いただき、様々な学習をしています。
学習の最後にその方が、過去にあったその週の出来事を紹介してくださるのですが、今週は1994年11月16日に「国連海洋法条約」が発行されたというお話を伺いました。
最近、北朝鮮がミサイルの発射を繰り返し、それが「日本の排他的経済水域(EEZ)内の日本海に着弾」と報道されたり、物騒な報道が続きます。
「排他的水域(EEZ)」と言われるとそれだけで何か物々しく、怖い印象を受けますが、実際にどういうことなのかはよくわからずに聞いています。今回の学習は興味深いものでした。
「国連海洋法条約」は「海の憲法」とも言われるもので、アメリカ・トルコを除く168の国と地域、EUが批准しているそうです。もちろん日本も批准しています。
領海と公海
「領海」とは、領土(陸地)から12海里(1海里=1.852キロメートル)。
いわば海の領土ですが、外国の船でもそこで何もしなければ、自由に航行することができます。それを「無害通航権」と言うそうです。
領海ではその国の法律に従って通行しなくてはなりません。
勝手に漁業をしたり、麻薬取引などの犯罪にかかわると判断した船は、警察権を使って取り締まることもできますし、船長を逮捕することもできます。
それ以外の海は基本的に「公海」です。
「公海」はどこの国からもまたどんな影響も受けることなく自由に航行でき、誰のものでもない海。
領海の外側12海里は「接続水域」です。
いきなり領海に入ってきて事件やトラブルにならないように、出入国管理上、衛生上などの違反を防止するための領海というような意味で、違反が明らかと思われる船への監視、警告などはできますが、この水域内で他国の船に規制をかけることはできません。
ニュースなどで「中国公船が尖閣諸島周辺の接続海域を航行し領海に侵入したことに対し、日本が領海と接続水域からの退去を求めた」という報道がされますが、普通に航行している船に対して「退去を命じる」権限はないということです。
じゃぁ、ニュースで報道していることは一体何だろうかと疑問が生じます。
「排他的経済水域」とは
領土から200海里までが「排他的経済水域」です。
「排他的経済水域」では魚などの漁業資源やレアメタル、石油などの地下資源に関してはその国が優先的に管理できることになっているそうです。
また漁業資源についてはその保護が義務化されていて、どれくらい捕獲できるか、そのうち自国でどれくらい捕るかを決め、差し引いた分は他国に漁獲を認めなければならないことになっているそうです。
「排他的」という言葉からは「その国だけの権利」というような印象を抱きますが、決してそこにある資源に対してすべての権限を持っているという意味ではないということです。
「排他的経済水域」というのは結局は海の地下資源についての考え方であり、「領海」「領土」とはまた違うということを理解しておかなくてはいけないのだと思います。
そこに北朝鮮のミサイルが落下したとしてもそれは何ら我が国への脅威ではないということも、また理解しなくてはならないのだと思います。
北朝鮮のミサイルが発射されるたびに「我が国への脅威」だと喧伝され、「だから日本も軍備を増強しなくてはいけない」という雰囲気がつくられていると思います。
けれど、決してそういうことではないという事実を私たち国民がちゃんと理解しておかないと、政府の軍備増強の姿勢に振り回されてしまうと思いました。
「領海法」
「領海」「接続水域」「排他的経済水域」について定めているのは、日本では「領海及び接続水域に関する法律(領海法)」で1977年に制定、96年に改正されています。
他国も同じように、それぞれの国で法律で定めています。
昨年来、ロシアと中国の軍艦が津軽海峡を通過したというニュースが報道されました。
日本国内の狭い海峡を通るなど、とんでもないと国民に思わせるようなニュースでした。
しかし実は、日本の領海法では領海を12海里と定めましたが、①宗谷海峡、②津軽海峡、③④対馬海峡西・東水道、⑤大隅海峡は「特定海域として当分の間3海里とする」と定めているのだそうです。
このように定めた理由は明らかにはされていませんが、制定当時アメリカの核を積んだ軍艦・潜水艦などが通っても「領海に入っていない」と言い逃れができるようにするためだったのではないかと言われているそうです。
いずれにしてもロシアと中国の軍艦が津軽海峡を通過したということは法律が認めた範囲内での出来事であり、決して「とんでもない」ことではなかったということがわかりました。
国連海洋法違反の中国の「海警法」
昨年2月、中国海警法が施行されました。
「我が国の管轄領域とその上空で海上の権益を擁護する法律執行活動にあたる」「国家主権、安全保障及び海洋権益を害する行為を予防・阻止・排除する。そのために武器使用を含むあらゆる必要な措置をとる」という内容とのことです。
しかし、そもそも「我が国の管轄海域」とはどの範囲を示すのか、明らかにしていません。曖昧な表現では、台湾や中国が領有権を主張している尖閣諸島・南シナ海の南沙諸島・西沙諸島が「自国領」、その周辺の東シナ海・南シナ海も幅広く「我が国の管轄海域」とすることさえ可能になってしまいます。
中国の「海警法」は明らかに国連海洋法条約に違反しています。日本政府や各国はこれを批判し、撤回を求めるべきです。
しかし日本は日本で「我が国の領土・領海・領空を守り抜く」と強調し、ミサイル防衛強化や海上保安庁と自衛隊の連携強化を打ち出しています。
「そっちがそう出るなら、こっちも」と軍事対軍事の動きに出ることは、最悪の結果を招きかねません。
領土・領海・領空を強調すればするほど世界各国が協力して取り組むべき気候変動・海洋汚染・飢餓など地球規模の課題解決への取り組みに逆行することになってしまいます。
日本は慎重にあるべきだと思います。