『「小児性愛」という病―それは、愛ではない」

2020年06月22日

とてもショッキングな本を読みました。
『小児性愛』という病ーそれは、愛ではない』(斉藤彰佳著 ブックマン社)です。


著者の斎藤さんは精神保健福祉士・社会福祉士で、東京都豊島区の大森榎本クリニックに所属しています。
同クリニックでは2006年から反復する性的逸脱行為、痴漢・盗撮・強制性交や強制わいせつといった性犯罪をやめられない人を対象とした専門外来を開設しています。当初から子どもへの性加害者も対象としていましたが、2018年からは「小児性愛障がい」と診断され、子どもへの性加害をした者に特化したプログラムを始めたとのことです。

著者は100名以上の子どもへの性加害者と関り、この本が書かれました。

小児性犯罪は、他の性犯罪と比べても再犯率が非常に高いそうです。
子どもへの性的嗜好を持続的に持つ者や、子どもへの性加害をする者は国際的な診断基準で「小児性愛障がい」とされています。著者たちはそれに加えて、アルコール依存症や薬物依存症と同じように、「依存症」という側面もあると考えているそうです。
「依存症」でやめてくてもやめられない状況に陥っているので、長期にわたる持続的な矯正プログラムが必要だけれど、日本にはそういう施設やプログラムが非常に限定されている残念な状況にあるとのことです。

クリニックの聞き取り調査で、36%の方が身体的・心理的虐待・ネグレクトがある家庭や、親のどちらかあるいは両方にアルコール依存症があったそうです。その中には、親から「やり方を教える」と親の目の前でマスターベーションを強制された経験を持つ人も複数いたそうです。
また半数が学生時代にいじめられた経験を持ち、そのいじめも苛烈で、同級生の目の前でマスターベーションをさせられるなどして、総じて強い挫折感と共にその後の人生を生きている・・・。
そんな特徴があるそうです。

1996年にストックホルムで開催された「第一回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」では、欧州諸国で流通している児童ポルノの約8割が日本製であるとして、強く批判されたそうです。
日本のセックスドール工場では、子どもの体つきをしたリアルなセックスドールが作られています。
イギリスやオーストラリアでは輸入が禁止されているそうですが、日本の市場では堂々と流通できるそうです。
専門家は「女児のセックスロボットは、小児性愛者の歪んだ性的嗜好を助長し、倫理的な感覚を麻痺させ、より病的な思考へと導くリスクがあり、決して放置すべきではない」としているそうです。

性暴力のない社会でありたいと思います。
特に子どもへの性暴力・性的虐待なんて、絶対に許すことはできません。
性暴力をなくすためには、子どもに「気をつけなさい」というだけでは全くダメだということが判りました。
小児性愛障がいを生まない社会にしなくてはいけないんですよね。
そのためには虐待やいじめをなくし、一人一人の尊厳が守られる社会をつくらなきゃいけないし、児童ポルノを廃絶しなくちゃいけない。
性加害をしてしまった人には、罪を償うだけではなく、矯正プログラムを生涯にわたり受け続け、性加害を止め続けることを保障する。
そもそも、そういうプログラムがもっといろんなところで受けられるようにしなくてはいけないし、プログラムの内容を精査して研究していくのも恐らくこれからの課題だと思います。
プログラムに参加し続けることは「子どもへの性加害を止め続ける」「子どもへの加害をもう二度としない」との思いを忘れずに持ち続ける」ために非常に大切なことだと理解しました。
しかし、ここに通い続けるためには誰かの支えが必要で、寄り添い、伴走する誰かの剤が大切です。
卑劣な犯罪を犯した人に何故・・・?
という意見もきっとあるでしょうが、周囲が支えることが小児性愛障がい者が犯罪をい返さない、つまり新たな被害者を生まないための唯一の道なんだと理解しました。
だからこそ、「障がい者」「嗜癖」「依存症」なんだという理解が必要なんだと思いました。