『あのころはフリードリヒがいた』

2023年10月06日

この本も、とても深く考えさせられる一冊でした。
『あのころはフリードリヒがいた』(岩波少年文庫 ハンス・ペーター・リヒター著)。
中学生向けに書かれた、ヒトラーが台頭する戦前から戦中のドイツを舞台にした小説です。

共に育った裕福で明るいユダヤ人の幼馴染フリードリヒがいわれのないひどい攻撃にさらされ、恐怖の中でひとり死んでいきます。
主人公の中にはものすごい葛藤があるのに、フリードリヒを助けることができません。
もし助けたとしたら、次に攻撃されるのは自分だとわかっているから。
フリードリヒがどんな気持ちで死んでいったかと思うと、悲しくて悲しくてなりません。
だけどもし私がその時代に生きていてフリードリヒの幼馴染だったとしたら、私も自分に災いが及ぶことを恐れて、ただ見ていただけだったかもしれません。

昨日観た映画『福田村事件』が改めて胸に迫ります。
「今度もまた、あなたは見ているだけなの?」。
「朝鮮人なら(ユダヤ人なら)死んでもええんかい!!」。

ただ見ているだけの人、傍観者にならないためには自分の中にどんな力を養えば良いのか。
悶々としてしまいます。
が、繰り返し考えなくてはいけないテーマが描かれた、素晴らしい作品だと思いました。
ぜひ、読んでみてください。