『わたしたちのトビアス』

2025年02月14日

一昨日放映されたクローズアップ現代、『精神疾患600万人 ❝閉じる家族❞をどう支える?』を観ました。
精神障害者の長期入院を改善する中で、家族に重い負担がのしかかっている現状、精神障害者を介護しているご家族の約3割が周囲にその現実を伝えられていない現状などが描かれていました。
訪問看護などのサービスを利用することで本人もご家族も穏やかに過ごせるようになることも描かれていましたが、まだまだそこにたどり着けないご家族も多いことなども描かれていました。
患者さん本人やご家族に「内なる偏見」があり、精神疾患を患っていることや家族に精神障害者がいると知られることによって世間から疎んじられてしまうのではないかという自らの偏見により精神科医療や精神障害者のサービスに繋がりにくい現実があるということが描かれていました。
先日観た映画、『どうすれば良かったか』にもつながるお話だと思いました。

30年近く前に出会った、ひとりの方を思い出しました。
統合失調症を発症し精神病院に入院したのですが、そこでの医療がとても恐ろしくて逃げだして、以後通院もしていませんでした。
国家と警察と教育委員会と精神病院とが自分を陥れようとしているという妄想で、とても苦しんでいました。
精神医療そのものの問題と、自分が統合失調症なんかであるはずがないというような「内なる偏見」の両方の問題を抱えていると感じていました。
私はその方ととても親しくなりましたが、ただ親しくなったというだけで、結局何もできなかったという心残りが今もあります。

精神病院の少ないベトナムと、精神病院の多い日本とを比べると、日本の方が明らかに偏見が強いという話がとても印象的でした。
日本には精神病院が多く、精神疾患の患者さんを長期にわたり社会から隔絶し、閉じ込めてしまう・・・。だから精神疾患の方と触れ合う機会もおのずと少なくなってしまうし、理解するチャンスがない。そういうことだと思います。

子どもたちが小さいころ、『私たちのトビアス』という本をよく読み聞かせしました。
スウェーデンで90年代に書かれた絵本です。
「私たち」の弟トビアスはダウン症で、生まれるとすぐに施設に入れられてしまいました。
その誕生をみんなでとっても楽しみにしていたのに、一緒に暮らすことはできませんでした。
ダウン症や障害のある子どもたちが施設に入れられているので、みんなはダウン症を理解するチャンスがなく、ダウン症や障害者を理解することができず、みんなは「怖い」と思ってしまう。
地域で一緒に暮らせれば、「怖い」なんて思わなくなるんじゃないかな。
そんなことを子どもの目線で語る絵本です。

日本の精神障害者もトビアスと同じような状況に置かれているのだと思います。
地域の中で一緒に暮らすことで、偏見は少なくなっていくはずです。
精神障害者のみなさんが地域で一緒に暮らせる社会、みんなで目指していきたいです。