『われ弱ければ 矢嶋楫子伝』

2022年02月06日

今週の『週刊金曜日』の表紙を飾ったのは、最高齢の日本の女性映画監督 山田火砂子さんと常盤貴子さんの2ショットでした。
山田監督と、最新作『われ弱ければ 矢嶋楫子伝』の主演を勤めた常盤貴子さんとの対談が掲載されていました。
矢嶋楫子さんという女性を、不勉強で大変お恥ずかしいのですが、初めて知りました。
今も千代田区にある女子学院の初代校長を、なんと20年にも亘り務めた方だそうです。

武士の家に嫁ぎ、酒乱の夫に悩み、日本で初めて女性から男性に離縁状を叩きつけた人ともいわれているそうです。
39歳で猛勉強をして小学校の先生になり、その後女子学院の校長となり、女性解放運動に生涯をささげたという矢嶋楫子さん。
この映画は何が何でも観なくては…と思っていたところ、今日とある文化センターで山田監督を招いての上映会があると知り、大急ぎで行ってきました。

いろいろなことを考えさせられる映画で、本当に良い映画でした。
感動したのは校則を破る学生が後を絶たない中で、校則を廃止した場面でした。
アダムとイブはたった一つの約束事さえ守れなかった。そんな人間が、決まり事だらけの校則を守れるはずがない。「あなた方は聖書を持っています。自分で自分を治めなさい」と校則を廃止したのでした。
人間に対する信頼が深い・・・、そんな風に感じました。

矢嶋楫子さんは一夫一婦制、婦人参政権、禁酒、廃娼運動など、女性解放運動に生涯をささげた女性です。 
その背景には酒乱の夫に苦しんだ過去も影響していたと思います。
もう一つ大きかったのだろうと思ったのは、その時代に父親のない子どもを産んだ体験だったのではないかと思いました。
 矢嶋楫子さんは東京に出てきた当初お兄さんの家に身を寄せましたが、そこで出会った書生の男性と深い関係になりました。
男性は妻子がありながら楫子さんに言い寄り、楫子さんが妊娠したと知ったとき、こう言うのです。
「あなたを正式な妾として迎えます」と。

今の感覚なら「ふざけるな!!!」だけど、当時の感覚では泣き寝入りというか、そのまま妾になる人もたくさんいたのかもしれません。
矢嶋楫子さんの優れた所はそこで泣き寝入りせず、 妾になるような人生を選択するのではなく、一夫一婦制、女性の尊厳を訴え、闘っていったところではないかと思います。
でもその強さを持ったのは、その時代に父親のいない子を産んだからこそだったのだと思います。

人間、生きる上で何が強みとなり、何が弱みとなるかはわかりません。
矢嶋楫子さんは、弱かったからこそ強く生きた女性なのだと思いました。

「運命とは、命を運にあずけることです。
大切な命を運に任すのではなく、
これからの女性は、使命をもって生きてください。

使命とは、命を使うことです。
自分の命は、自分で使うのです」。

深い言葉です。