『下層化する女性たち 労働と家庭からの排除と貧困』

2020年04月01日

今日読み終えたのは、『下層化する女性たち 労働と家庭からの排除と貧困』(小杉玲子・宮本みち子 編著 勁草書房)です。

子どもの13.9%(7人にひとり)が貧困状態にあり、ひとり親家庭の50%以上(2人にひとり)が貧困状態という日本の社会。
しかし非正規労働者の貧困の問題が社会問題化したとき、それは男性の非正規労働者の問題とされ、女性の貧困の問題は長らく問題視されてきませんでした。
女性の賃金の方が男性よりも低いこと、他国と比べても男女間の賃金格差が大きいこと、そして女性の労働者の55%が非正規労働者であることが判っているにも関わらず。
それは何故だったのでしょう。

何故女性が貧困なのかと言えば、「性的役割分業が社会システムの中に組み込まれているからということに尽きる」と、この本は指摘しています。
「女性の労働や社会保障のあり方が、男性が稼ぎ主で女性は家事を主にする標準的な家族を前提にしており、それゆえ女性の労働は不安定で低賃金なものがほとんどになってきたこと、これが女性の貧困問題の核心である」と。

2000年ころから、男性の非正規化・不安定雇用が進む中で女性の未婚率が進み、働いて生活を支えなくてはならない女性が増えたにも関わらず、その賃金体系・社会保障が変わっていないこと、男性と対等になっていないことが問題だと、指摘していると思います。
そして特に貧困に追いやられるのが学歴の低い女性たちです。その女性たちは貧困は経済的困窮の問題だけでなく、様々な暴力に晒されていることだと指摘しています。

こうした状況に対して、まず行うべきことは女性の賃金を男性と対等にすること。
そして、若年女性労働者に対する職業教育・訓練と就職支援などの積極的な労働政策を進めることです。

欧米では既に80年代ころに女性の貧困が問題になり、対策がとられています。
日本はそこから20年くらい遅れて女性の貧困が問題になっているのだとしたら、こんな問題が起きることは初めからわかっていたことではないかと思います。
始めからこんな事態を見越して政府が手を打っていれば、苦しむ女性も子どももずっと減っていたはずです。
そういう社会をつくってこなかった政府の責任は大きいと思いました。