『徴用工の真実 強制連行から逃れて13年』

2023年02月03日

今日読み終えた本は、早乙女勝元著『徴用工の真実 強制連行から逃れて13年』(新日本出版社)です。

そもそもなぜ強制連行が起きたかと言えば戦争で男性たちが徴兵され、日本は働き手不足がとても深刻な状況だったから。
そしてまるでバッタでも捕まえるかのように中国の人々を捕まえ、縄でくくり、貨物船で強制的に連れて来ました。その数38,953人。水も食料も乏しい中、船中死は564名、上陸後の鉄道輸送で事業所到着前に248名が死亡。
新居浜警察署の「華人労務者警備計画」には「周囲に高さ10尺乃至12尺の板囲を為し、逃亡防止の為板塀の上部に電線を張り巡らし350ボルトの電流を送電す」とあり、拉致された中国人たちが逃げだしたくなるような過酷な状況が伺われます。

劉連仁さんはこうした過酷な状況の中、1945年7月に逃亡を図り、過酷な寒さの北海道で終戦も知らないままたった一人で13年を過ごした方でした。劉連仁さんに焦点を当てつつ、日本の加害の歴史をえぐり出す一冊です。

以前にもお伝えしたことがあるかと思いますが、私には忘れることができないある中国人の方との会話の記憶があります。
次男が通っていた保育所での話です。
当時私はその保育所の父母会長を務めていました。同じクラスには日本人の他中国人のお子さんも確か4~5人いましたし、保育所全体に中国人だけでなく海外のお子さんがたくさん通園していました。
当時の父母会では日本人だけで交流するのではなく、外国人の保護者ともどのように交流したら良いのかということが一つの課題となっていました。

ある土曜日の午後、次男は保育所のすぐそばの公園でずっと中国人の男の子と遊んでいました。
私はちょうど良い機会だと思って、その子のお父さんに国際交流をどのように進めたらよいかと相談してみました。
その時のお父さんの言葉は本当に衝撃的でした。
「日本人と中国人の交流なんて絶対に無理」「何故なら、日本人は戦争責任を果たしていない」。その時私は本当にショックで、お父さんが何を言っているのか理解することができませんでした。だって戦争は私たちが生まれるずっと前のことで、私たちに責任があるはずもなくお父さんは多分同世代だと思うけど、中国は一体何を教えているんだ!!
それが当時の私の率直な印象でした。

でも今は、そんな風にしか思えなかった自分を恥ずかしく思っています。
そしてこの本にも、こうした問題が鋭く書かれています。102~103ページの記述をご紹介します。

「国際法に違反する強制連行の閣議決定をしたのは、紛れもなく日本政府だった。しかし、現地での陰惨な『労苦狩り』作戦は、一部に傀儡軍が手先になったものの、日の丸の旗をかざした日本兵によって行われている。さらに国内での奴隷並みの強制労働は、これに企業が加担したものだった。その企業=昭和鉱業は今はもう存在しない。
したがって、主たる責任は日本政府が負うべきだが、直接に関わった日本人一人ひとりも、戦争犯罪に手を下したといえる。被害者たちの傷がまだ癒されていない以上、その戦争犯罪に時効はないのだ。
しかし、戦後半世紀余が過ぎた今となっては、無関係だという人がもはや絶対多数だろう。無関係なら、オレは知らないよでいいのかどうかである。
この問題に『我関セズ』では、臭いものに蓋をしようという勢力の思うつぼにはまってしまうし、歴史そのものも継承できず、日本と中国との真の友好は望むべくもない。さらに後に続く世代が国際社会に生きる以上、アジアや世界から孤立していくだろうことも、気にかかる。
他民族をないがしろにすれば、自らの人権も危うくなると思わざるを得ない。
いまや『日本人の誇り』だけを云々する説が声高だが、人間として人類の心構えが大事で、私は劉さんら中国人戦争被害者の人権回復に関心を持ち、いささかなりと心を寄せたいと思う。
それは、とりもなおさず私たち自身の人間らしく生きる権利と社会正義、ならびに国際的信頼を構築する課題とも一つに結び合うだろう」。知らないでいては、たとえ戦後世代であっても中国の人々と友だちにはなれない。」

そういうことを思い知らされた一冊でした。