一人芝居『あの少女の隣に』
運営委員として参加させていただいている『慰安婦問題とジェンダー平等ゼミナール』のメーリングリストで、精神科医でもあるくるみざわしんさん作・演出の一人芝居、『あの少女の隣に』が西荻で上演されていることを知りました。
調べてみると昨日スタート、最終日は明日という超タイトな上演スケジュール。
どうしても観たいと思い、ちょうど今日は夕方から夜まで空いていたので慌てて予約を取って観に行ってきました。
すごい舞台でした。
従軍慰安婦をテーマとしたお芝居なので、私は当然女性の一人芝居なんだろうと思い込んでいましたが、なんと男性の一人芝居で、慰安婦問題を男性の立場から描いた作品でした。
戦争中の兵士の欲望のはけ口として女性を戦場に連れて行くという作戦は、ナポレオンの時代から始まったものだということ。日本でも西洋式の軍隊を真似て、早くから従軍慰安婦を置いていたこと。従軍慰安婦というと韓国女性をすぐに思い浮かべるけれど、実は日本人女性もたくさん被害にあっているのに、日本人女性で実名を公表して被害の事実を訴えている人は二人しかいないという事実。
戦争が終わると今度は占領軍の為に、戦時下で困窮した女性をかき集めて売春させたという事実。
占領軍が撤退しても日米安保条約・地位協定下で米軍基地が残り、今度は米軍のための売春施設を基地周辺に作り、やはり貧しい女性に売春をさせた・・・。
そしていずれの時も国家は一見売春を取り締まるかのような姿勢を見せながら、実は売春による性病の蔓延を取り締まっただけで、売春による売り上げを「税金」として懐に入れる・・・。
国家にとってお金の為に身体を売る貧しい女性は常に必要で、だからこそ女性の賃金は男性よりも安くなくてはいけない・・・。
慰安婦問題だけではなく国家的な性暴力、日米安保条約、女性の貧困、ジェンダー平等の問題にも踏み込み、又その政策を推し進めなければならない男性の抑圧された状況にまで踏み込んだ作品で、もうとにかく「スゴイ!」と言うしかありませんでした。
わずか1時間20分の舞台の中にこれだけの課題を入れた脚本もすごいけど、矢継ぎ早に次々と言葉を繋いでいくシナリオを恐らく完璧にこなす俳優さんもすごすぎる・・・💦
従軍慰安婦という問題が単に日韓問題だということではなく、貧しい女性が男性の慰めの為に利用され、そうでない女性の貞操を守るために使われ、またそうでない女性は貧しい女性を見下すような分断が生まれ、それが実は問題の本質から目をそらすような事態を招いている・・・。
本当の問題は国の姿勢であり日米安保条約や地位協定なのに、売春する女性を敵視することで留飲を下げるような間違った状況を招いている。
韓国では慰安婦像があちこちに置かれその被害を訴えているのに、日本ではその椅子に座る人がいない。
被害を受けているのに、誰もその椅子に座れない。
その被害を公表することで、新たな別の苦しみを生むことが目に見えているから、誰も被害を訴えられないのだと思います。
「あの少女の隣に」という題名。
韓国の慰安婦像の隣に堂々と座れる日本人女性がいないという事実の重さを訴えているように感じました。