中帰連平和記念館

2020年12月09日

もう1カ月半も前の話になりますが、10月24日、「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナール(代表:吉川春子さん)の今年初めてのフィールドワークで「中帰連平和記念館」に行ってきました。

実は今年は、「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナールの運営委員に就任させていただきました。と言ってもコロナの影響で総会も書面でした。先日初めて運営会議が開かれましたが、所用と重なり参加できませんでした。
というわけで、特に何をしているわけでもありません。

「中帰連平和記念館」へのフィールドワークという通知をいただいたとき、絶対に何が何でも行きたいと思いました。
コロナ対策で募集人員を15名に限ると書かれていたので、大急ぎで参加申込書を送りました。

「中帰連」というのは、中国の撫順戦犯管理所に戦犯として抑留された、旧日本軍の軍人が帰国後に結成した会です。帰国後、「戦犯」「シベリア帰り」「中国の赤化教育を受けてきた」などのレッテルを貼られ、仕事に就くにも厳しい状況に置かれる中で、互いに連絡を取り合い励ましあったりする中で結成された会だと認識しています。
そこに集まった皆さんはその後、「日中友好」と「不再戦」の決意のもとに戦争証言を続けてきました。
記念館はそうした活動を続けてきた皆さんの、「平和への意志を受け継ぐ場」として建てられ、資料を収集・整理・保存・閲覧などを行っています。
確かに、戦争にかかわる膨大な書物が展示されていました。

「東アジアの平和を考える会」で、地域の皆さんと一緒に日本の加害の歴史を学ぶ活動をしています。一昨年は旧満州を視察しました。
「侵華日軍第731罪証陳列館」や「平頂山惨案史実展」「惨案遺址」などを視察しました。

戦中日本がとった作戦は「三光」作戦でした。「殺し尽くし、焼き尽くし、奪い尽くす」。 中国の人々を「マルタ」として「1本2本・・・」と数え、人体実験に使った歴史的な事実。生きたままで解剖したり、ペストに感染させたり、毒ガスを吸わせて毒ガス兵器の効果を調べたり・・・。
平頂山では「記念写真を撮る」と村人全員をだまして集め、何千人もの村人を一斉に射殺したり・・・。
強姦も当たり前のように行われていて、幼児から70代の女性までが被害に遭い、強姦した後銃殺したり、井戸に投げ込んだり、驚くようなことが日常茶飯に行われていました。
あまりにも残虐な史実に言葉を失いました。

残虐の限りを尽くした旧日本兵らを教育したのが「撫順戦犯管理所」でした。管理所は「この日本人は今は戦犯だが、20年たったら日中友好を考える友人になる」という、当時の習近平首相の哲学を反映した再教育施設でした。戦争犯罪を認め、人間性を回復させたこの施設の取り組みは「撫順の奇跡」と呼ばれています。一昨年の視察では、ここも見てきました。

「私たちは中国で何をしたか」(中国帰還者連絡会編 三一書房)も読みました。
シベリアから戦犯管理所に送られ、そこで数年を過ごした兵士たちの手記です。
当初は管理所の職員たちに「中国人」という差別意識を持ち、また自分たちが犯した罪にも気づいていませんでした。
しかしそこで数年を過ごす中で、教育の効果で次第に自分の犯した罪に気づき、それを言葉にして吐露し、人間性を回復していく過程はすさまじいものを感じさせられました。
撫順から帰還された方々の帰国後の人生を知りたいと思っていました。今回のフィールドワークで帰国後の生活が決して楽なものではなかったこと、その中で証言活動・戦争の悲惨さ・日中友好と反戦平和を訴え続けた方々が多くいらっしゃった事実に感動しました。

その活動を支えたご家族の中には、戦時中に夫が人を殺したり強姦したりしたという話など聞きたくないと耳を閉ざす方もいらっしゃったけれど、その方が亡くなられた後、記念館に多額の?寄付を寄せられた方もいらっしゃったというお話も伺いました。

家族の支えなしに、この活動を続けることはできなかっただろうと想像したりしました。

心に残ったのは大森典子弁護士のお話でした。飢餓状態になればなるほど、性欲が増す。死の恐怖に直面するとき、「子孫を残す」という生殖本能が非常に強く表面化する、そんなお話でした。「なぜ残虐な行為ができたのか」、長年の疑問に、ふっと答えをいただいたような気がしました。

施設は鶴ヶ島市にあります。
東武東上線の鶴ヶ島駅からタクシーで10分余りのところです。
旦那クンの実家の最寄り駅の一つ先の駅だと教えてくれました。
タクシーに乗って周りの景色を見ていて、驚きました。
子どもたちが小さかったころ、旦那クンの実家の周りをあちこちドライブしたものでしたが、その頃に見慣れた景色が目に飛び込んできて、その景色の中に記念館があったのです。
・・・こんなところに!という感じでした。
研修室の膨大な書物にも感動でした。
いつか時間ができたら、毎日でも通って、一冊一冊、読んでみたいものだと思いました。
とても良いフィールドワークでした。