医療ひっ迫の中で推進される病床削減
12月議会が終わってあっという間に年末を迎えてしまい、12月議会の内容を十分にお伝えすることができないまま新しい年を迎えてしまいました。遅くなりましたが、12月議会での一般質問をお伝えしたいと思います。
今回私が取り組んだのは、今国が進めている病床削減の問題です。
昨年5月21日、病床削減などを盛り込んだ「医療法等改正案」が可決・成立しました。2020年度から病床の削減や統廃合を行った医療機関に給付金を配る仕組みが導入されましたが、今回の改正によりそれが恒久化されました。その財源は消費税です。社会保障のために充当するはずの消費税が病床削減のために使われることに対し、大きな疑問を感じています。
埼玉県内には10の保健医療圏があり、吉川市は東部保健医療圏に属しています。
私が質問したのは、東部保健医療圏の病床削減計画と市民生活への影響についてでした。
担当部長の答弁は、東部保健医療圏の病床数は「埼玉県地域保健医療計画」に定められた基準病床数を下回っているため病床削減は行わず、266病床の整備を進めるとのことでした。具体的には高度急性期病床を増やす一方で、急性期病床を回復期病床へと機能転換を進める方針です。
埼玉県の東部地域は今後急速に高齢化が進行することが予測される地域です。
高齢者が増えれば病気を抱える人は増え、慢性疾患が急性増悪するケースも当然増えることが予測されます。こうした状況の中で病床全体の数は減らさないまでも急性期病床を減らすという政策が、結局は実質的な病床削減であり、必要な時に入院できない状況が生み出されるのではないでしょうか。
担当部長の答弁は、「各地域ごとの人口・高齢化の進み具合、区域外への入院や区域外からの入院も含めて必要な病床数を見込んでいる」とのことでした。
県の「地域医療構想」を読むと、部長の答弁の意味が分かります。
東部地域は入院するときに千葉県や東京都、さいたま市や南部地域などに入院していて、逆に東部地域に入院しに来る人はそれほど多くない、「流出超過」の状況にあるとみられています。「病床利用率を見
る限り、必ずしも一般病床に不足感はない」と記されています。
でも、本当にそうでしょうか。
コロナ禍で医療がひっ迫した時、東部地域の医療はひっ迫しなかったのでしょうか。
感染して医療を必要とした人がみんなちゃんと入院することができ、安心して闘病できる状況だったのでしょうか。
そこは県からの情報がないので、正直まったくわかりません。
全国ではコロナ禍で医療がひっ迫し、医療を必要としながら入院すらでないままにご自宅で命を落とした方が相次ぎました。私たち共産党議員団が今年も行った市民アンケートにも、「万が一感染した際に入院できるのか不安」との声が非常に多く寄せられました。コロナ禍が明らかにしたことの一つは、平時から余力を伴った医療提供体制の確保・充実・強化が求められているということではなかったでしょうか。
気候変動や森林伐採の影響で、新興感染症のリスクが高まっていると言われています。コロナが終息したとしても、新たな感染症に対する備えが非常に重要です。
こうした課題が明らかになった今、病床削減ありきの政府の姿勢は明らかに逆行したものであり、非常に大きな疑問を感じます。
国や県と今後どのような協議を進めていくのか、市の姿勢を問いました。
担当部長は「今般のコロナ禍において病床がひっ迫したことは、非常に大きな問題」と認めたうえで、「国も今後地域医療計画を作るにあたっては新しい感染症対策について盛り込む必要があると言っており、注視していく」と答えました。