医療的ケア児への支援、吉川市でもスタートへ

2021年09月19日

今年6月11日、「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が可決・成立しました。
この秋から施行ということでしたが、吉川市でもケアを必要とするお子さんへの支援がスタートすることになりました。

医療が発展する中で、「生後1週間以内に半数が死亡し、1歳のお誕生日を迎えられるのがわずか10%」というような重い病気を持って生まれたお子さんや、生後間もなくから人工呼吸器の装着を余儀なくされるようなお子さんも、就学期を迎えられるような時代になりました。
そういうお子さんたちの就学が保障されるようになることを、本当にうれしく思います。
法の目的は、医療的ケア児の「健やかな成長」と「家族の離職の防止」とのことです。

医療的ケアの必要なお子さんは、全国で約2万人と言われています。
吉川市の対象児童・生徒数は小学校で一人、特別支援学校に3名、中学高校にはいないとのことです。

https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/000553177.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/000553177.pdf

法の施行に伴い、吉川市でも医療的ケアの必要なお子さんに対し、看護師を配置するための補正予算が9月議会に提案され、可決しました。た。
看護師二人を採用し、毎日一人の看護師を配置し、支援体制をつくろうとの計画です。

吉川市では以前にも、医療的なケアの必要なお子さんに対し市独自に看護師を配置していた時期がありました。
今回は国の負担で費用が賄われる形になります。
今回と何がどう変わるのか、文教福祉常任委員会で質問をしました。
質問にあたって、前回のケアに関わっていた方々にも直接お話を伺いました。
普段は医師や他の看護師とともにチームの中で働く看護師にとって、学校というエリアで、しかも一人で働くというのはとても責任の重いものです。「みんなで児童を守る体制をつくることが必要」との思いで、話をしてくださいました。

看護師は医療の現場で様々な処置をしていますが、ただ単純にその処置をしているわけではありません。
例えば痰の吸引をするにしても、呼吸音を聞いたり唇の色や指先の色を見たり、全身の状態を見ながら処置をします。食事はちゃんと摂れているのか、夜は眠れているのかなどその方の普段の状態を把握し、合併症の有無やその方の既往歴、その方は持病?に対してどんな考えを持っていて、どんな風に対処しているのか。
それからご家族の方はどんな病気を持っていて、その方にはどんなリスクがあるのかなど、様々な情報を踏まえながら処置をするのです。
そしてその時の状態が正常なのか異常なのかを判断し、「異常」だと判断する際にも緊急を要する異常なのか、それとも経過を見て良い状態なのか、どんなことに注意しながら経過を見れば良いのか・・・、そんなことを判断し、伝えるべき人に伝える・・・。
看護師が行うケアとは、そういうものです。

前回は教育委員会や学校でそうした情報が把握されていなかったとのことです。
大切な情報がないままに、実際に医療的ケアが始まってから看護師さんたちが情報を集め、医療機関と連携したような状況だったそうです。安全安心に係るためには、ケアが始まる前に情報収集し、医療機関とも連携するような仕組みが求められます。市の考えを問いました。

答弁者は学校教育課長兼教育部副部長でしたが、前回の市の担当職員だったとのことで、とても丁寧に実感を込めて答弁してくださいました。
前回の課題について、その通りだと思っているとのこと。
県内でも東松山市と吉川市しかやっていない事例で、手探りの中で東松山市に視察に行き、何度もご指導をいただきながら進めたそうです。
今回は前回の事業との大きな違いとして、医療的ケアを進めていくうえでしっかりとした会議の体制をつくるということになっているそうです。会議体をつくることが、学校における医療的ケア実施体制充実事業の中での重要な部分となっていると。
会議には主治医の指示は勿論のこと、特別支援や医療の現場に精通している方、もちろん看護師にも委員として参加していただき、体制をつくっていくとのことです。
そうした会議の中で予測されるトラブルを確認し、その時看護師は誰に相談すればよいのか、また急変時にはどのように対応するのかなど、明らかにして取り組んでいただきたいと要望しました。

もう一つ主張したことは、看護には教育的な側面があるということです。
今は処置して差し上げるしかないかもしれませんが、発達・成長に応じて自分でできるようになっていただくように指導していくのも大切な役割です。
会議の中では、そうしたことも話し合えるようにしていただきたいと要望しました。

学校教育課長の答弁は、県や国のガイドラインでもその処置については「自立に結び付けていくことがとても重要」と書いてあるとのことでした。
そのお子さんご自身の状況や会議の中での医師の意見も踏まえながら、少しずつ自分で処置できるような方向につなげていきたいとの答弁でした。
「それが本人の自立する力にも繋がっていくと考えている」とも。
私もそう思います。

しかし、コロナ禍で看護師の不足が本当に深刻な中で、看護師の採用は実現するのでしょうか。
市の答弁では、既にお一人は採用する方向で話が進められているとのことでした。中学校での養護教諭の経験もある方とのことで、学校のこともよくわかっている方だと思われるので、一安心だとは思います。
が、課長は「あと一人は、どなたかいらっしゃればぜひ紹介していただきたい。これは心からの声です」と、切実そうに訴えました。
本当に切実なんだと思います。
正直、時給も安いと思います。看護師の時給の相場より、相当安いのです。
その金額での採用は、相当厳しいだろうとの見解は伝えさせていただきました。

学校内での医療的ケア、プライバシーをどう守るのかも非常に大切な問題です。
学校とも十分に詰めながらプライバシーに配慮して進めていきたいと、とても誠実な印象の答弁でした。

この事業が全国各地で進められ、医療的ケアの必要なお子さんの就学がしっかりと保障される社会になると良いなぁと心から思います。