吉川教育を考える会 現場の先生のお話を聞く
昨日は吉川教育を考える会のみなさんと一緒に、教育現場で働く皆さんのお話を伺いました。いろんなお話を伺ってとても面白かったというか興味深かったのですが、そのいくつかをお伝えしたいと思います。
まずは教職員のお話。
今最も深刻なのは臨採の先生がとにかく不足していて、産休の代替の先生の確保さえも非常に難しいというお話。
教職員のブラックな働き方がすっかりと知れ渡り、教員という仕事が魅力的な職業ではなくなってしまい、特に理科・数学など理系の先生が不足しているとのお話でした。
臨採の先生を、県が大切にしていないというご指摘もありました。
臨時採用で何年か仕事をした人を優先的に正規採用にすれば良いのに、埼玉県はそういうことをしていないとのことでした。
教員として働く意欲のある人を大切にしていない・・・、そういう意味だと理解しました。
吉川市では今年、すべての小学校の三年生までのクラスで35人学級を実現しました。
ただそれはそのための教職員を採用したのではなく、加配の先生に担任を持っていただいたということで、加配の先生を活用して35人学級を実現するかどうかの判断は学校側に委ねられていました。
今年はそれに該当する小学校が美南小学校だけで、美南小学校では35人学級を実現することを選択しました。
が、それは美南小学校が大規模な学校で、加配の先生が多いことから実現が可能だったと聞いています。
35人学級は今後も計画的に進めていくことと思いますが、教職員を増やさずに学級数を増やすと何が起こるか・・・。
文科省には、小学校の高学年を教科担任制にする(中学・高校みたいに)とかそんなことまで考えようとする動きもあるそうです。
そうは言っても、埼玉県の臨採の先生の給与は正規採用の先生よりは安いものの、他の県と比較すると良い方だとのお話。
さらに吉川市は全ての特別支援学級に支援員を配置しているとか、事務支援員や図書館司書をすべての学校に配置しているとか、算数の支援の先生も加配しているなどほかの市にはない優れた面があるとのお話も伺いました。
教職員の働き方を改善するために、「負担軽減委員会」が設置されているというお話もありました。
ICT教育の話もいろいろと伺いました。
今年スタートした一人一台のタブレットは本当によくできていて、たとえば漢字の書き取りなど、私たちの感覚だとノートに何度も何度も書かないと覚えられないのではないかと思います。が、タブレットは指でなぞるようにできていて、正しくできるとポイントがもらえるような仕組みで、子どもたちはポイントが欲しくて頑張っているとのお話もありました。
しかし一方で、タブレットで本当に学力が付くのだろうかということもみんなでいろいろと話をしました。
数年前旭小学校5年生にひとり一台のタブレットが導入されたとき、たとえば数学の問題で躓いたとき、その子が何に躓いているのか、掛け算ができないとか割り算ができないとか、そのお子さんの躓いているところを見つけて、そこにさかのぼって学習をすることで理解ができるようになる、学習が身に着くというような説明をどこでだったかは忘れましたが、聞いた記憶があります。
それを聞いたとき、私は率直に「いいな」と思いました。
私たち大人も何かを学習しながら理解できなくなったときには、「そもそもそれはどういうことなのか」と一つ遡って学ぶことで理解できるようになることがよくあるので、子どもも同じだと思ったのでした。
でも、今日みんなで話をする中で改めて考えました。
自分がどこに躓いているかに気付き、それを学び理解を深められるのは私たちが大人で、すでにそれだけの力を身に付けて生きてきたからではないかと。
理解できないまま過ごしてきてしまったお子さんが、タブレットが「あなたの躓きはここ」「ここからやり直しましょう」と教えてくれたところで、一人で乗り越えられるだろうかと。
それまで理解できずに過ごしてきてしまったことを改めて学びなおすためには、誰かの支援が必要であり、要するにどんなにタブレット教育を進めようと、最期にやっぱり必要なのは「人」だということでした。
十分な「人」を配置し、何がわからなかったのかが分かった子どもたちをサポートする体制こそ重要だと学びました。
でも、現実はどうなんでしょう???
ICT教育というのは、文科省がイニシアティブを握っているのではなく、経産省の発想により進められています。
ICT教育を推進すればハードが売れる、ソフトが売れる、ビッグデータが集積できる・・・。
だけどそれが本当に教育にとって重要なものなのか、その教育方法が適切なのか、立ち止まって考える必要があるのだと思いました。
今日の会議に参加された一人の方は、若い教職員のみなさんの研究論文を読む機会が多いそうですが、「コロナ禍でみんなで集まれないときのタブレット教育と、今集まれるようになってきた中でのタブレット教育、本当に有効なのか?」といった趣旨の研究がとても多かったと話してくださいました。
とても大切な話だと思いながら、伺いました。