国民健康保険税、吉川市は引上げせず据置に
吉川市では、来年度の国民健康保険(国保)税・介護保険料共に引上げせず、現行のままに据え置きにされることが3月議会で決定しました。
コロナ禍で市民生活が困窮する中でも、自治体によっては引き上げを決めたところも多々ある中で、吉川市ではどちらも引き上げをせず、据置としたということは本当に高く評価することのできることだと思っています。
私たち日本共産党吉川市議員団が昨秋も行った市民アンケートでは、市に望む施策で最も多かったのは国保税・介護保険料の引き下げでした。
引き下げまではいかなくても、今の社会の中で引き上げをしないということ自体、とても大変なことだと思います。
職員の皆さんの奮闘に、感謝したいと思います。
吉川市の国保の取組みは特に保険者努力支援制度、特定検診受診率や特定保健指導実施率等では県内でも非常に高い評価を受けています。
特定保健指導は外部に委託せず、健診結果を基に保健師や栄養士が無料で実施しています。
多くの自治体が外部委託している中でのこのような保健指導の実施、本当に素晴らしいと思います。
職員の皆さんの素晴らしい奮闘はあるものの、国保・介護保険共にとても厳しい状況に置かれています。
少し説明させていただきます。
国保の加入者は、ほかの社会保険(職場の健康保険)に加入していない人、後期高齢者医療保険(75歳以上の方の医療保険)の対象外の人、そして生活保護の受給者ではない人です。
2016年から、パートで働く人の一部が社会保険に加入することができるようになったことで国保加入者は減り、今は30%弱となっています。
そして国保の加入者は中高年が多く、65~74歳が4割超を占めています。
定年退職した方々がそれを機に国保に流れ込んでいると考えられています。
したがって、国保加入者は無職の年金生活者が多いというのが現状です。
若い世代の加入者も職場の健康保険に加入していないわけですから、無職の方や従業員が5人未満の個人事業で働いている方が多いと考えられます。
社会保険の加入者は保険料の半分を会社が支払う仕組みになっています。
また、社会保険は収入の少ない家族を「扶養家族」として自分の保険に加入させることができます。
そして社会保険加入者は会社で働く世代やその家族が加入しているので、一般的に健康な人が多く、全体に医療費がそれほど多くはかからない仕組みになっています。
一方で国民健康保険は、加入者が保険料を全額支払わなくてはなりません。
しかも中高年の加入者が多いことなどの特徴から、病気を患っている人も多く、医療費が非常に高い状況にあり増す。
その高い医療費を加入者で賄っていかなくてはならない・・・。
しかも、扶養制度はありません。
国保税は必然的に高くならざるを得ない、そういう宿命を負った制度になっています。
なのに、国保加入者は無職の人が多い現実。
必然的に、国保税を払いきれない人がたくさん生まれてしまうのです。
この矛盾をカバーするために設けられているのが国保税の軽減制度です。
国保の特別会計に市町村の一般会計から繰り入れをして(法定外繰り入れ)、所得の低い方々の国保税を軽減しているのです。
なんと、加入者の約6割がこの軽減制度を利用しています。
2018年、「国保の都道府県化」が進められました。
この制度改変の最大のねらいは、この「法定外繰り入れ」をやめさせることでした。
法定外繰り入れを国保の「赤字」と位置づけ、赤字を解消するためにその負担を加入者に支払わせようというのが、国保の都道府県化です。
吉川市も国のこの方針に基づいて、平成31年に「吉川市国民健康保険財政健全化計画」を作成しました。
「国民健康保険財政を安定的に運営していくためには、国民健康保険事業に必要となる費用は、国等からの公費と国民健康保険税により賄い、一般会計からの支援に頼らず運営していくことが基本」「国民健康保険税財政調整基金を活用しながら2019年度から毎年度10%ずつ、2023年度までに50%に削減します。 なお、2024年度以降の赤字繰入の解消・削減については、その後の国民健康保険
財政の見通しや社会情勢等を踏まえて検討する」と記されています。
3月議会で可決された国保特別会計予算も。法定外繰り入れを今年度決算見込み額よりも10%減額した予算です。
共産党以外の議員は予算に賛成しました。
しかし、本当に賛成して良いのでしょうか。
今は激変を緩和する意味で基金(積立金)を活用し、被保険者の負担の増大を抑えています。
でも、基金は無限にあるわけではありません。
それほど遠くない将来、基金の活用には歯止めがかかり、低所得者の軽減措置が削られ、負担が増大していくリスクは非常に高いものと考えています。
今でも、高すぎて国保税を払えない人がたくさんいらっしゃいます。
そういう方々が受診を諦め、さらに体調を悪化させています。
税の負担が重くなればなるほど、そういう方が増えていってしまうのではないでしょうか。
それが本当に、健康で文化的な最低限度の生活を保障していることになるのでしょうか。
全ての人の医療にかかる権利、健康に生きる権利を保障していることになるのでしょうか。
こうした制度の矛盾に対し意義を唱え、反対する議員が共産党だけというのはとても残念な現実だと思います。