精神障害者にも対応した地域包括ケアシステム=「にも包括」の推進を

2023年10月03日

「にも包括」とは?

「にも包括」と略称で呼ばれる「精神障害者にも対応した地域包括ケアシステム」。
「にも包括」は精神障害の有無にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らすことができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加、地域の助け合い、普及啓発を包括的に確保することを目指しています。
高齢者や身体等の障害者を包括的にケアする「地域包括ケアシステム」は、まだまだ十分とは言えない状況はあるものの、それなりにできてきています。しかしそのシステムは精神障害者にも対応しているとはなかなか言えず、偏見や長期入院などまだまだ課題は大きい状況です。
そんな状況の中で、「精神障害者にも対応した地域包括ケアシステム」の構築のたいせつさが注目されるようになり、「にも包括」との親しみやすい略称で、推進が求められています。

市の障がい福祉計画にも位置づけた「にも包括」

一昨年3月に策定した「第6期吉川市障害福祉計画」にも「にも包括」が位置づけられています。
しかしその内容は「国の指針では、精神病床入院後3か月時点の退院率については69%以上、入院後 6か月時点については86%以上、入院後1年時点の退院率については92%以上と することとされています。その他にも精神障がいに対応した指針が示されております が、それらの数値目標につきましては、埼玉県で設定しています」というもので、そのために市が何をするのかは全く書かれていません。
この文章からは、県に丸投げの印象も否めません。
現実にこの数値目標が今現在どのような状況なのか。
9月議会一般質問で、私はこのことを問いました。
市の答弁は「各病院の入退院の状況を知り得る立場にはない」「退院の時期は医師により適切に判断されるものと認識している」というものでした。

市の役割は?

それでは「にも包括」に向けて、市は何をするのでしょう?
市の答弁は「市としては努力目標として掲げた。国の動き、県のバックアップ等未成熟。この後どう進むか、まだまだ見えてこない部分もあり、計画には掲げたがまだ曖昧な部分が多い。実際のところ、システムの構築までは至っていない」とのことでした。

国の動き、県のバックアップがまだまだ未成熟だということはわかります。そういう中で、市だけが率先してシステムを構築することなど無理だということも分かります。
でも、ただ国や県の動きを待つだけで良いのでしょうか?
市内の精神科病院との話し合い、家族会との話し合いなど、国や県の動きを待たなくてもできることはあるのではないでしょうか。
しかし、市は市内の精神科病院とも家族会とも話し合っていないと答えました。
例えば偏見をなくすための努力とか、国や県を待たなくてもしないの精神科病院・クリニックと力を合わせてできることはあるはずで、ぜひ話し合いをしてほしいと思います。

グループホームの必要量などについては来年度スタートの第7次障害福祉計画に位置付けられるよう、よく検討したいと答えました。

隔離政策の誤りが今白日の下に

精神障害者の方々を地域で支える仕組みを作ることが簡単なことではないことは、私にもよくわかります。
長期間の入院で社会性を奪われてしまった人や、その方を支える親兄弟が既になくなってしまった方もたくさんいらっしゃると思います。
地域包括ケアシステムすら、ここにきてようやく「精神障害者にも」との認識が出てきた状況です。
ただ、滝山病院から救出され、外に出てアパート暮らしを始めた方や、3.11の影響で福島で病院をそのまま運営すること自体が危うくなり、患者さんたちが地域の病院に送り出され、そこからその人が社会の中で生きていく力を見出され、一人で暮らし始めたという方も実際にいらっしゃいます。
そういう方たちの中に国家賠償責任訴訟を起こしている方も、今たくさんいらっしゃいます。
国が長年とってきた精神障害者の長期隔離政策が誤りであったことが、今白日の下にさらされ始めています。
市としても、そういう長期入院の方を受け入れていくような状況を作っていかなくてはいけないのではと思います。

精神障害者が地域で生き生きと暮らせるようなまちづくりを

愛媛県愛南町では2016年に町内唯一の精神科病院を廃止しました。
長期入院していた方々は今みんなでアボカドを栽培し、その商品は銀座の有名店にも出品されるほど素晴らしいものが創られているそうです。
そして元入院患者さんたちがとても生き生きと生活されているそうです。
吉川市にも精神科病院がありますが、何も今すぐそこを廃ししろとか、そんなことを声高に叫ぶつもりはありません。そこで働く方々の暮らしがあり、簡単な話ではありません。
しかしそういうことも含め、市の「にも包括」をどのように進めるのか、病院のみなさんと話し合うことはとても重要なことだと思います。
イタリアでは10年以上前に精神病床をなくしています。精神病床がなくても救急対応さえできれば精神障害者も地域の中で暮らしていけるということが明らかになっています。
精神障害者の方々が地域に帰って、地域の中で生き生きと暮らせるようなまちづくりを心から期待したいと思います。