3月26日は「生物兵器禁止条約発効」の日

2022年03月30日

私たち日本共産党吉川市議員団は、毎週金曜日に学習会を開催しています。
その時々で本やパンフレットを読んだり、時には動画を観たり。
学び、議論する力・質問する力を高めていきたいと強く思っています。
学習会には議員団だけでなく市民の方にも参加していただいて、 話題を提供していただいたりして、視野を広げる努力をしています。
この間最も面白いと思っているのは、参加してくださる市民の方が提供してくれる「今週の知ってるつもり」です。
会議のあるその週の、歴史的な出来事を紹介していただくのです。
これがまた全然知らなかったようなお話が出てきて、しかも今この時代にもかかわる話題で、とっても興味深いのです。
先週の「知ってるつもり」は、3月26日の「生物兵器禁止条約発効の日」でした。
ご紹介します。


ロシアのプーチン大統領が2月24日隣国ウクライナに軍事進攻を開始しました。
「ウクライナが生物兵器を開発し、それにアメリカが関与している」「ロシアが存亡の危機の場合は核兵器の使用もありうる」プーチン大統領周辺はこのように述べて、核兵器や生物化学兵器の使用をちらつかせています。
当初数日で首都キエフを陥落させると目論んでいましたが、それが思うように進んでいないことへの焦りもあり、「核保有大国」としての脅しともいえる言葉です。
「戦争」や「軍事侵攻」という言葉は使ってはならないとロシア国内で取り締まりを強化し、デモ参加者などを拘束していますが、現実はロシアの軍事侵攻そのものであり、ウクライナの被害は軍事施設のみならず、民間人の犠牲者、学校などの施設や住宅の破壊も日に日に増えている状況です。
誰もが「まさか21世紀のこの時代に、こんな戦争が起こるなんて(@ ̄□ ̄@;)!!」と思いました。
軍事力を使った戦争は「第2次世界大戦の終わりとともに完全に否定されたはず」だったからです。             二度の世界大戦を防ぐことができなかった反省から、戦後国際社会は、侵略戦争は絶対に起こしてはならない悪であること、国際紛争は話し合いで解決していくことを誓いました。

そして1945年国際連合を結成し憲章を定めました。
その第1条には、「国連の目的は、国際の平和と安全を維持すること。平和を破壊するに至るおそれのある国際的の紛争または事態の調整または解決を、平和的手段によってかつ正義および国際法の原則にしたがって実現すること」と定めています。
また第2条には、「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって解決しなければならない。いかなる国に対しても武力による威嚇もしくは武力の行使を慎まなければならない」と行動の原則を定めています。
第33条では、「いかなる紛争でもその当事者は、まず第一に交渉・審査・仲介・調停・仲裁裁判・司法的解決・地域機関の利用その他、当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない」と具体的な手だてを定めています。

もしウクライナ東部の2つの州で国民が抑圧弾圧されているというならば、ロシアはそれを国連安全保障理事会で訴えるのが筋です。
2つの州から要請があったからと「特別軍事作戦」をすることは国連憲章に違反する行為です。
まして、核兵器や生物兵器を使用するかのような威嚇をすることは、戦後の国連を中心とした平和への努力を無にする行為です。
「打撃力」「抑止力」として武器や兵器が進化し、たとえば第1次大戦で初めて使われた毒ガス、第2次大戦では原子爆弾、戦後のベトナム戦争では枯葉剤が使用されました。
また、各地の紛争で地面に埋められた地雷にふれて無関係の子どもたちが死傷するなど、人間と自然環境が危険でむごたらしい状況にさらされるたびに、国際人道法の観点からも、無用に人体に苦痛を与える兵器や、自然環境を過度に破壊する兵器を禁止していこうという流れが国連を中心に進んでいきます。
その先駆けとして1975年3月26日「生物兵器禁止条約」が発効しました(ロシアも含む179か国が締約)。
かつて日本軍は中国ハルビン郊外に通称731部隊を編制し、細菌兵器を開発して、中国人を実験台に使い、さらに人々が住む村で使用するなどを極秘裏に進めていたことが戦後初めて明らかになりましたが、こうした細菌やウィルス、各種病原体などによって殺したり病気にすることを目的とした兵器を使用、生産、貯蔵、取得などを禁止し、すでに保有している場合はこれを廃棄することを定めました。
1977年6月にはジュネーブ諸条約の追加議定書が策定され、・無用の苦痛を与える兵器等の禁止・自然環境に広範長期かつ深刻な損害を与える戦闘の方法手段の禁止・危険な力を内蔵する工作物(ダム、堤防、原発)等の保護が定められました。        1997年4月には「化学兵器禁止条約」が発効し、193か国が締約しています。

戦争中の1929年、日本では瀬戸内海の大久野島に陸軍の毒ガス工場を建てました。
大久野島は地図上から消され、極秘に生産が続けられ、国民にはその事実は知らされませんでした。
製造された毒ガスは中国戦線で使用され、多くの人々に被害を与えました。戦争末期に日本軍は地中や海底に毒ガスを遺棄したまま終戦をむかえましたが、化学兵器禁止条約では外国に放置されたものも製造国が処分する義務があると定めています。
日本政府は真剣にやっているかは不明ですが、2017年現在で中国で4万6,000発を発掘・廃棄したそうです。
しかし中国に遺棄した化学兵器は少なくとも30~40万発、中国側は200万発と言っていますから、日本政府は最後まで責任をもって処理するべきです。

その後1999年3月には「対人地雷禁止条約」が発効しました。
2020年現在164か国が締約していますが、アメリカ、ロシア、中国をはじめ、インドやイスラエル、シリアなどが不参加です。                              2010年8月には、「クラスター弾に関する条約」が発効しました。
111か国が締約していますが、アメリカ、ロシア、中国、イスラエルなどはまだ参加していません。
これらの条約に大国が参加していないことや、国家ではない組織(たとえばISのような)をしばることができないことをもって条約の効力がないとの指摘もありますが、世界の半数以上が締約しているという国際世論と、これを主導した世界のNGO組織の取り組みで、非加盟国といえども使用をためらわせている事実もあります。
しかし、ロシアのウクライナ軍事侵攻ではクラスター爆弾が使用されたのではないかと言われており、さらに大きく国際世論を高めていくことが必要です。
同様に2021年1月22日に発効した「核兵器禁止条約」は、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)や被爆者団体などが長年取り組んできた成果が実を結んだものであり、核兵器の開発、実験、製造、備蓄、移譲、使用、威嚇としての使用、を禁止する画期的な内容です。
しかしこの条約に対しても核兵器保有国が参加していないから効力がない・隣に核兵器を持っている国がある場合はどうするのか・日本も核共有を検討するべき・非核3原則は昭和の価値観、などと批判する声もありますが、「核戦争に勝利者はいない」と核兵器保有国が出した声明にもあるように、またロシアに核兵器を使用させないようにするためにも、最も確実な方法は核兵器を廃絶することだという声を大きくしていくことがいまこそ大事になっていると思います。

写真は2019年に「東アジアの平和を考える会」で訪れた旧満州の「旧日本軍731部隊罪証陳列館」です。