「リプロダクティブ・ライツ」

2025年06月29日

昨日開催されたトークイベント、『リプロダクティブ・ライツの視点で観た日本の課題』に参加しました。

第一部はネパールのリプロダクティブ・ライツに関する映画上映。
第二部ではこのブログでも以前ご紹介した、『私たちの中絶 38の異なる経験』(石原燃 大橋由香子著 明石書店)の第3章を執筆された8名の方が、リプロダクティブ・ライツと中絶を巡る課題について語ってくださいました。

どのお話も心に強く残るお話でしたが、その中で神奈川新聞の記者、加地紗弥香さんのお話を少しご紹介したいと思います。
国が毎年取りまとめている「子ども虐待による死亡事例」で、2003年~2021年に把握した「0日・0カ月」の死亡事例は213例。神奈川県が2023年に行った「妊娠を周囲に相談できず支援機関に繋がっていない妊婦」の調査では、2018年~2022年の5年間で151件。
しかもこの数字は政令市を除いた数字であり、横浜や川崎を入れたらもっとその数は増えるはず。
半数を20代前半までの妊婦が占め、56件は出産するまで支援機関とも繋がっていなかったとのこと。

そして誰にも相談できないまま孤立出産をして、死産だった場合も含め生まれた子どもを遺棄。
遺棄した女性はマスコミに曝され、マスコミの取材により隣近所にもその事実が知れ渡り、また裁判でも厳しく断罪される。けれどなぜその女性は誰にも相談できなかったのか、そもそも何故予期せぬ妊娠をしなくてはならなかったのか、社会の側の問題は断罪されず、女性の罪だけが断罪されるような社会。
この社会のあり様にこそ大きな課題がある・・・。

そんなお話だったと思います。
時に涙ぐみながらお話しされているようにも見え、その怒りがストレートに伝わってくるような気がしました。
胸に沁みつつ、やはりこの社会のあり様を変えて行けるように私も力を尽くしたいと思いました。

石原燃さんのお話の中で、中絶を語る言葉がとても少なく、語る言葉を増やしていくことがとても大切だということ。
参加されていた産婦人科の医師のお話で、医療の中で中絶だけが唯一「応召義務」がないのが中絶だという言葉が心に残りました。
応召義務とは、患者さんの求めに応じて医師は診療しなくてはならないし、自分の範疇を超えている場合は他の医師に紹介しなくてはいけないというようなものです。
でも中絶に関しては自分の価値観と違えば断っても良いし、他の中絶について詳しい医師を紹介する必要もない・・・。
だから望まぬ妊娠をした女性が医師から見放されたような気がしたり、中絶を断念したりする状況に追い込まれるのだということもよく分かりました。
少し前に観た舞台『彼女たちの断片』は劇作家・石原燃さんの作品で、中絶を扱った舞台でした。
私は先に『私たちの中絶』を読んでいたので、てっきりこの本を舞台にしたのが『彼女たちの断片』だと思い込んでいました。
でも実は、『彼女たちの断片』という芝居を書いたことで中絶に関してあちこちでお話しする機会が増え、そして出版社から声をかけられて『私たちの中絶』の出版に繋がったのだというお話しも印象的でした。