『マリヤの賛歌―石の叫び』アフタートーク

2025年07月23日

『マリヤの賛歌―石の叫び』公演では、アフタートークゲストに参議院議員を4期24年に亘って務め、繰り返し「慰安婦」問題を取り上げて活躍された吉川春子さんをお迎えしました。
吉川さんは今も「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナールを主宰し、「慰安婦」問題、そして戦時性暴力やジェンダーの問題に取り組み続けています。
「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナールには、私も参加させていただいています。

アフタートークは『マリヤの賛歌―石の叫び』の作者のくるみざわしんさん、出演者の金子順子さんを交えてお話をいただきました。

金子順子さんのお話もとても深いお話でしたが、ここでは吉川さんのお話を簡単にご紹介したいと思います。

韓国人「慰安婦」金学順さんが名乗り出たのは1991年。
戦後46年も経って初めて名乗り出た人が現れ、韓国でも性暴力被害を名乗り出ることがいかに難しいことかがわかる。
韓国では韓国挺隊協が、「あなたの名誉を守り、あなたの生活を保障します」と強く呼びかけ、200人以上の女性が「慰安婦」が名乗り出た。
国を挙げて日本の植民支配に対する怒りが強い韓国では、その犠牲者である「慰安婦」だった女性の名誉回復の運動が支持され、政権も「慰安婦」問題に熱心に取り組んだ。
日本政府もこれを無視することができず、韓国人「慰安婦」には一定の施策を行った。

これに対し日本では「慰安婦」だった女性に「名乗り出て!」とは誰も呼びかけなかった。
何百万の男性が戦争で外国に行き、「慰安婦」の存在を知っていたにもかかわらず。
政府も日本人「慰安婦」に対して一切の施策をせず、野党国会議員の提出した「慰安婦」救済法案も日本人だけは対象外とした。
こうした中で日本人「慰安婦」そのものが顧みられず、放置されてきた。

元々娼妓・売春婦だった女性が多く「慰安婦」になっていたため、日本では「金儲けのためだった」という見方が強かった。しかしその女性たちは貧困のために娼妓とされた人がほとんどで、元々は無垢な女性だったことは置き去りにされた。

アジア太平洋戦争に従軍した兵士には生還した人も遺族にも恩給が支給されている。
2007年の支給総額は60兆円に及ぶ。
しかし、「慰安婦」だった女性には1円も支給されていない。
城田さんは帰国後も遊郭で働いた過去が邪魔をしてまともな働き口がなく、性売買の仕事をせざるを得なかった。数千人かそれ以上いたと思われる日本人「慰安婦」は、城田さん以上に戦後の日本社会での生活は大変だったと思われる。
政府はこうした女性たちを見殺しにするのではなく、戦場に送った兵士同様、生活の面倒を見るべきだった。
コロニーを多数建設して困難な女性たちを救う義務が日本政府にはあった。

最近困難を抱える女性支援法が成立したが、日本人「慰安婦」達にこそこうした法律が必要だった。

現在も女性にとって性産業が手っ取り早く収入を得られる場であり最後の砦となっている。
日本では男女雇用賃金格差が非常に大きく、非正規雇用は女性の6割にも上っている。
男女同一賃金、また女性の経済的自立こそが女性にとって暴力から身を守る手段でもある。

もう一つの問題は女性の売春は処罰されるが、男性の買春がお咎めなしとされていること。
男性は女性の性を自由に買うことができ、禁止されているのは18歳未満の女性を対象にした買春のみ。
18歳以上の女性への買春(性売買)もぜひ禁止しなければならないと法律家の意見も強くなっている。
今の日本で、江戸時代のように男性の性売買が自由に任されていることは許しがたいこと。
こうした社会の体制を変えなくてはなりません。

吉川さんはこの問題に長年取り組み続けているだけあって、お話に重厚感もあり、熱い思いも感じられ、そして被害者への思いはとても温もりを感じるもので、流石でした。
この公演に取り組めたことが幸せです。