『彼女たちの断片』

2025年05月17日

ビックリするほど素晴らしい舞台を観てしまいました。
TEE東京演劇アンサンブル『彼女たちの断片』(作:石原燃 演出:小森明子)。

リプロダクティブ・ヘルス/ライツに関するありとあらゆる問題が様々な角度から描かれていて、とにかくすごい作品でした。
予期せぬ妊娠に対するパートナーの対応や中絶のハードルの高さ、経口避妊薬の問題(この作品が作られた当時はまだ、日本では経口避妊薬が保険適応とされていなかった)、日本の中絶医療の遅れ、中絶に対する周囲の受け止め方、経口避妊薬の使用の実際にLGBTQに水子供養。
予期せぬ妊娠をした人を処罰的に扱うかのような風潮、中絶の歴史、何よりも「私の身体は私のものだ」「決めるのは私」「尊重されるべきは本人の意思」という熱いメッセージ。

こんなにもたくさんの問題が僅か2時間余りの舞台の中に詰め込まれていて、一瞬たりとも気を抜くことができず、息を吞んでいる間に2時間余りの時間が過ぎ去ったような感覚です。
「2時間で学ぶリプロダクティブ・ヘルス/ライツ」と言っても良いような作品です。

この作品の中で初めて学んだのは、中絶の歴史でした。
江戸時代や明治初期には子どもがたくさんいる家庭では「間引き」などは当たり前に行われてきました。
それが明治政府の「富国強兵」「産めよ増やせよ」という政策と結びついて、1907年に「堕胎罪」が刑法に位置付けられました。その堕胎罪で罪に問われたのは妊娠させた男性ではなく、堕胎した女性だけでした。
堕胎させないために「産婆さん」を免許制にして、出産のみを扱わせるようにして、堕胎や間引きを指せないような仕組みに変えた・・・。
こうした事実を、私は全然知りませんでした。

優生保護法は障害者に「断種」を強いて子どもが産めない身体にしたというように認識されていますが、元々は敗戦後の混乱、兵士の引き揚げなどによる人口増加や混血児の出生に対応するためのものであったということも、正直私は知りませんでした。

水子供養が始まったのが1970年代だったという事実も、私は知りませんでした。
そういえばその頃、何もかもが「水子の祟り」だと女性週刊誌やワイドショーなどで取り上げられていたような気がします。
でもそれは中絶した女性に罪悪感を抱かせるためのもので、「水子供養」という一つのビジネスだったことを、今日初めて知りました。

石原燃さんという方を知ったのは、私がハマりにハマっている劇作家、くるみざわしんさんの舞台のアフタートークに時々登場されるからでした。
そして関心を持つようになり、昨年は『蘇る魚たち』という舞台を観ました。
また『私たちの中絶ー38の異なる経験』(明石書店)という本を読み、それは3月議会の一般質問「リプロダクティブ・ヘルス/ライツの推進を」に繋がりました。
とても高い人権意識を持った方だということが、今日改めてよく分かりました。
この舞台を観ることができて、本当にラッキーでした。