『性的同意は世界を救う』
3月議会の一般質問で「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ」について質問しました。
何故この質問に取り組んだのかは、また改めて近いうちにお伝えしたいと思います。
そのとき傍聴してくださった方が「雪田さんが言いたいのはこういうことではないか」と言って、『性的同意は世界を救う』(斎藤章佳×櫻井裕子著・時事通信社)を紹介してくださいました。
斎藤章佳さんは、以前このブログでも『「小児性愛」という愛―それは愛ではない』という本をご紹介したことがあります。精神保健福祉士でアディクション(依存)、特に性犯罪を繰り返す方々への支援を手厚く頑張っている方だと認識しています。
興味深々で、さっそく買って読みました。

警察庁の統計で、1997~98年強姦や強制わいせつの容疑で逮捕された553人に行った調査では、33・5%が「AVをみて自分も同じことをしてみたかった」と答えているそうです。少年だけに絞ると、これは5割近くに跳ね上がるそうです。
ある事例では、「中学生の時に生まれて初めて見たAVで、嫌がる女子生徒のセーラー服のスカートに射精をするシーンに激しく衝撃を受けた。その時の体験は『脳内を電撃が走った』かのようなすさまじい衝撃だった。しかも、スカートを汚された女子生徒は最後は満面の笑みを浮かべて喜んでいた。その時、『スカートに射精されて悦ぶ女もいるんだ!』という大発見をした。その後高校生の時から同様の行為をするようになった」と、その後複数回刑務所に入っているそうです。
この話を聞いたとき齋藤さんは、性欲をコントロールできなくて性犯罪を犯すのではなく、性的な依存症の問題であることを知り、『性』を語る助産師、櫻井裕子さんとともに『性的同意は世界を救う』プロジェクトを立ち上げました。
そのプログラムでは、性加害をした人に対して
基本的な身体の仕組み(月経・射精・妊娠)、男性器への囚われ。男根コンプレックス、男性器の仕組み、女性の捉え方、性的同意、事例検討、逮捕の瞬間何を感じ考えたか、男尊女卑なのか女尊男卑なのか、『射精責任』、性教育と性暴力、身体の権利、性的同意などなどを取り上げ話し合っているそうです。
「包括的性教育は肯定的な価値観を育み、健康的な人間関係を築くために不可欠な学びである」と著者は書いています。
性欲には男性ホルモンである「テストステロン」が関係しています。
しかし人間の性欲は、外的刺激やこれまでの経験なども複雑に関係しています。
性欲は食欲・睡眠欲と並んで「三大欲求」のひとつとしてとらえられてきましたが、これはある意味危険をはらむ考え方でもあります。「男ってこういうもんだ」「性欲が高まってこそ男」「たくさんの女性とセックスしてこそ男」、そういう風潮が今もまだどこかに残っていて、それが女性を尊重しない強引なセックスに繋がっていく・・・。
性欲はちゃんとコントロールできるものだと、子どもに教えていく責任が大人にはある。
齋藤さんの経験の中で、「性欲が強過ぎて性犯罪を犯してしまった」という人は圧倒的に少数派。
「弱い者をいじめるような感覚」「支配欲や優越感が満たされる」「ある種の達成感がある」と、性暴力が複合的な快楽が凝縮した行為であることがわかる」と。
しかし日本の社会には「性欲原因論」があり、「レイプされるような恰好をしているほうが悪い」「そんな時間にひとりで歩いているほうが悪い」と、被害者が加害感情を抱き、加害者が被害感情を抱くというパラドキシカルな現象があり、それが性加害の犯罪性を薄めるような風潮に繋がっていると齋藤さんは書いています。
この認識を改めて行かないと、性加害がいかに人権侵害であり「魂の殺人」であるかということが十分に認知されないのではないかと思いました。
最近様々な方々と話をする中で、「買春禁止」の法制化の必要性を強く感じています。
男だから女性の性を買って当たり前、私はそういう男性を直接的には知りませんが、そういう風潮は確かにあると思います。
男性の性欲はちゃんとコントロールできるし、実際に多くの男性はコントロールしているでしょうし、性は買うものでも侵すものでもなく。
互いの性と人格を十分に尊重し合いながら愛し合う、そういう社会を作っていくためにも「包括的性教育」がとても大切であると学んだ一冊でした。