『日の丸とカッポウ着』
私のブログを読んでくださっている方はとっくの昔にお気づきかもしれませんが、くるみざわしんさんという劇作家さんにハマりにハマっています。
敗戦直後の日本政府が米兵のために設置した慰安所、RAAを描いた『あの少女の隣に』は5回も観てしまいました。
日本人慰安婦だった城田すず子さんを描いた『マリヤの賛歌』は2回観て、更に今年7月に吉川市中央公民館で公演していただく予定です。
その他にも、夏目漱石と田中正造を描いた『ひとつオノレのツルハシで」。
精神科医のつぶやきを描いた『私、精神科医』。
改憲を描いた『振って振られて』。
子どもたちによるホームレス襲撃を描いた『眠っているウサギ』。あ!これも2回観ました。
それから精神病院と原発事故を描く『精神病院つばき荘』、原発廃棄物の最終処理場の問題を描く『同年同郷』、天皇制と皇室典範の問題を描く『蝉丸と逆髪』。
カフカの小説『変身』の本質を描いた、『戻り道を探して カフカとミレナとマルガレーテ』。
「慰安婦」の問題を別の視点から描いた『あの瞳に透かされる』。
戦中に長野県の村長さんを務め、村民を満州に送ることを決意し、しかし敗戦直後に送り出した村民の集団死を知って自ら死を選んだおじいさんを描いた『鴨居に朝を刻む』。
どの作品にも魅了されてきました。
ハッとするんです。
自分が全く気付いていなかった「何か」に気付かされる。
そして、その「何か」が胸に迫って苦しくなるのですが、見ないではいられない、見なくてはならない・・・。
そんな気持ちにさせられる作品だと思っています。
でも、今日観た『日の丸とカッポウ着』は本当に凄い作品でした。

戦中に実在した、大阪発祥の「国防婦人会」を描いた作品でしたが、戦争に向かう社会の中で女性も何かをしたい、役に立ちたい、認められたいという気持ちもよく分かるものでした。
その気持ちが「婦徳」という、家父長制の中で女性が守るべきとされる「徳義」に絡めとられ、利用され、最後にはがんばろうとする女性が・・・。
くるみざわさんの作品にはそこかしこに「精神科医」の視点が散りばめられていて、精神疾患に苦しむ人間の姿がリアルに描かれていて、観ていてとても辛く苦しいのです。
『日の丸とカッポウ着』の最初の場面は、くるみざわさんはこんな作品も書くのかと思うような大阪弁のアップテンポで、そこかしこに大阪らしい笑いが散りばめられているのに、どんどんどんどん苦しくなって追い詰められていくんです。
今日は気持ちが落ち着くまでに、いつも以上に時間がかかりました。
それでもやっぱり「観て良かった」と思う一作でした。