本当に深刻な医療危機

2021年01月15日

コロナ危機が進行する中で、医療のひっ迫が更に深刻な状況になっています。
昨日、日本医師会の中川俊男会長は「このままでは、医療崩壊から医療壊滅」だと、非常に強い危機感を訴えました。

東京都では基礎疾患のある80代男性が、保健所が入院先を探していましたが見つからずに自宅療養中に死亡。
今週月曜日のテレビ朝日、羽鳥慎一モーニングショーでは、3人の子どもを持つ30代のシングルマザーの感染が確認され、呼吸困難や時々意識がまどろむなどの症状があり、それでも入院できない状況。子どもたちに宛てた遺書を書いたと報道されました。
更に今日のしんぶん赤旗では、今月3日に世田谷区の交差点で9歳の男の子が2歳の弟のベビーカーを押して横断歩道を渡っていたところ、左折してきた自動車と接触し、救急車が駆け付けたもののコロナの影響で近隣の病院に搬送を断られ、数十分かけて品川区の病院に搬送されたという記事が掲載されています。
コロナ感染者だけでなく、こうした不慮の事故に対する救命救急、更に一般の医療を必要とする方々にも深刻な影響が及んでいます。
週3回の人工透析で命をつないでいる腎臓疾患の感染者の方が、受け入れ病院が決まらず、コロナで死ぬか透析できずに死ぬか・・・、そんな悲痛な叫びさえ聞こえています。
私がお話を伺った方の中にも、膝の人工関節がゆがんでしまい、歩くたびに足が痛くてたまらない。コロナの影響で入院・手術ができない。痛みが辛いので我慢しているうちに、足の筋力低下が著しい・・・、そんな話もありました。

ま都内では90歳の高齢者施設入所中の女性も糖尿病の持病があり、ハイリスク群でありながら入院先を見つけることができず、一週間以上施設で待機したままの状況と報告されています。
このままでは施設の入所者・職員の皆さんに感染が広がってしまうだけではないでしょうか。
日本の医療、今本当に深刻な状況です。
吉川市の感染者も、あっという間にトータル135名になりました。

国民ひとりひとりがコロナ感染からいかに身を守るか最大限の努力をしています。
それでももし万が一感染してしまったら、PCR検査を受けられるのか、入院または入所ができるのか、やむを得ず自宅待機となった場合でもいざというときには入院させてもらえるのか、多くの方々の不安はここにあるのではないでしょうか。

こんな時に菅首相が考えていることを、私たちはどのように理解したら良いのでしょうか。

昨日開かれた政府・与野党連絡協議会で政府が示したコロナ対策特措法改定の方向性。
緊急事態宣言下での営業時間短縮の要請に従わない場合、過料を科す。
一方で事業者への補償については「支援を講ずるよう努める」と努力規定のみで、困惑・困窮する事業者を本気で救う姿勢は全くありません。
感染症法・検疫法の改定では、入院措置に従わない場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金という刑事罰を科す方向。
宿泊料用や自宅療養の協力要請に応じない場合は入院勧告。
感染経路を把握するための調査協力拒否に対しては6カ月以下の懲役か50万円以下の罰金を検討しているとのことです。

ちょっと待ってください!と言いたいです。
菅政権、そして自民党公明党の与党の皆さん、現実が見えていますかと。
入院させてほしい人が入院できない、それなのに入院に応じない人に罰金でしょうか?
入院が必要な人が入院できるような体制の強化こそ、政府の仕事ではないでしょうか。
感染経路を把握するための調査、この調査すらもはやとてもじゃないが追いつかない、そんな実態が報道されている中で、協力しなければ懲役刑または罰金。いったい何を言っているのでしょうか。保健所の統廃合を続けに続け、保健所の対応力を奪ってきたのはいったい誰だったのでしょうか。
菅首相の発言を聞けば聞くほど、怒りが収まりません。

13日の記者会見で菅首相は、日本の医療体制について記者から質問を受け、質問への答弁の中で医療法と国民皆保険制度に言及しました。
「多くの皆さんがその診察を受けられる今の仕組みを続けていく中で、今回のコロナがあって、そうしたことも含めて、もう一度検証していく必要がある」「必要があればそれは改正するというのは当然」だとの発言です。
そして、今日発表された報道では、国や都道府県知事が病院などに患者受け入れを勧告できるよう感染症法を改正する方針とのことです。そして勧告に従わない場合、病院名などを公表することで実効性を担保するとしています。
この改正法案、18日召集の通常国会に提出する方針とのことです。 

一体何を言っているのでしょう。
中規模小規模の民間病院がコロナ対応の病床を開けることができない、当然の話です。
感染対策のための施設設備が整っていない、対応できる医師・看護師体制がない、そもそも日本には医師や看護師が絶対的に不足している、この問題をどう解決していくのか、いま問われているのはそういう問題です。
問われているのは、これまでの医療政策の誤りではないでしょうか。
それを解決することは全く考えもせず、強権的に、体制もない医療機関に受入だけを求める。
その結果、逆に院内クラスターを広げることにはならないのか。
医療従事者の疲弊を更に募らせる結果にしかならないのではないか。
そう思います。

そして菅首相の「国民皆保険制度を見直す」発言、とんでもない発言です。
憲法に保障された「健康で文化的な最低限度の生活を送る権利」これを保障する国民皆保険制度です。
菅首相の発言は「みんなが医療にかかれることが問題だ」と言っているかのように聞こえます。

国民のいのちとくらしを守るという立場に立たない菅首相、医療のひっ迫した現実を見つめる力のない菅政権、そして更なる制度改悪を勧めようという自民・公明の政権与党。
コロナ感染の不安の影で、とんでもない政治が展開されています。
こうした状況に目をつぶることなく、おかしいことをおかしいと発言していきたいと思います。国民のいのちとくらしを守れ、今こそこの声をしっかりと上げていかなくてはと強く思っています。

ある公立病院でベッドコントロールをしている友人から、メッセージをいただきました。
「本当にギリギリの状態」
「気持ちがプツンと切れそうで怖い」
「定年間際の最後の一年、楽しくなかった」。
本当にその通りなのだろうと思います。
友人だけでなく、多くの医療従事者がそんな気持ちを何とか維持しながら奮闘していることに胸が痛みます。