『医の倫理と戦争』
映画『医の倫理と戦争』、ようやく観ることができました。

ペスト菌や炭疽菌などの開発だけでなく、中国人やロシア人などを捕まえて「人間の限界地点」を知るためにおぞましい人体実験を繰り返した、旧満州の731部隊。
ナチスもユダヤ人の人体実験を行っていましたが、幹部の意志はニュルンベルク裁判で絞首刑になっているそうです。しかし731部隊に関わっていた日本の医師たちは裁判を受けるどころか、731部隊の実験結果を論文発表し、日本の医学界の重鎮となっていった。日本の医学の発展そのものが、731部隊の延長線上にある。
この事実を認識し、共有し、「同じ過ちを繰り返さない」という立場に立った医学教育が行われているか???
世界医師会の「倫理マニュアル」には「倫理は法よりも高い基準を要求し、ときには医師に非倫理的行為を求める法には従わないことを要求します」と書かれているそうです。
どこの国であれ、どんな人種であれ、命を真ん中において、医師は法よりも倫理に従わなければいけない。しかし、大学でどれだけこの「倫理マニュアル」が教えられているか、どれだけの医師が知っているか・・・。
看護師の倫理綱領には「人々の生命、尊厳及び権利を守り尊重する立場から、生命と健康に深くかかわるあらゆる差別、貧困、様々な格差、気候変動、虐待、人身売買、紛争、暴力などについて、地球規模の観点から社会正義の考え方を持って社会と責任を共有する。常に、我が国や世界で起きているこれらの問題について知識を更新し、意識を高め、それらについて社会に発信するように努める」と書かれているそうです。
確か訪問看護認定看護師の資格取得のための研修で学んだ気がしますが、とっくに忘れてしまっておりました😅
というか、看護師でも倫理綱領を常に意識して仕事に向き合っている人は、そんなにはいないような気がします。
群星沖縄臨床研修センター センター長の徳田安春さんが今は亡き聖路加国際病院名誉院長の日野原重明先生に「医師にとって最も重要なことは何ですか?」と質問したところ、「戦争させないことが最も重要だ。これこそが医療者が最も取り組むべきこと」とおっしゃったとのこと。
そしてWHOの決議書にも「医療と医療従事者が、平和を維持し促進するための行動をとることが、すべての人々の健康を保持するのに最も重要である」と書かれているそうです。
日赤看護大学名誉教授で看護師の川嶋みどりさんは、看護師の諸先輩たちは戦地で救護看護婦として働いていて、戦地での様々な話を直接聞いてきたとのこと。
「生命を尊重し、守ることを使命とする医療従事者にとって、殺人を合法化し、最悪の人権侵害をする戦争は最大の敵。サイレント集団ではなく、本当に発言していかなきゃいけない」と語ります。
この夏に行ってきた千葉館山の赤山地下壕。
数年前に東アジアの平和を考える会のみなさんと訪れた旧満州の731部隊跡地。
大ファンの精神科医で劇作家の胡桃澤伸さん。
20代の頃から看護に関する本をたくさん出版されていて大いに刺激を受けてきた精神科看護師の宮子あずささん。学生時代から著書を何冊も読み、公演も聞きに行き、たくさんのことを学んできた川嶋みどりさん。
元済生会栗橋病院副院長で、日本の医療問題について全国行脚し講演活動を続ける本田宏先生。
などなど、他にも何となく存じ上げている方々が次々に登場され、その言葉の一つ一つがすーっと胸に入ってくるような、そんなドキュメンタリー映画でした。
医療従事者は医療従事者だからこそ、戦争に向かいつつある今の政治・社会にNO!の声をしっかりと挙げて行かなくてはいけない。
それを改めて深く胸に刻む、そんな映画でした。
