『押し付けられる結婚~「官製婚活」とは何か』
2026年01月21日
『押し付けられる結婚 「官製婚活」とは何か』(斉藤正美著 新日本出版社)を読みました。

- 2015年に安倍晋三元首相が打ち出した「アベノミクス・新三本の矢」のひとつ、「夢をつむぐ子育て支援」には「希望出生率1.8」が目標として掲げられました。政府は人口規模が長期的に維持できる「出生率2.1%」を視野に入れていて、それを達成するためには子どもを3人以上産む女性の増加が望ましく、「20代の結婚・出産」を奨励。
- 第二次安倍政権までの少子化対策といえば、少子化の原因を有配偶者出生率の低下と見做し、親が子育てと仕事の両立がしやすいように、待機児童を減らすなど保育園の充実と働き方改革による「子育て支援」を中心としてきた。安倍政権では、少子化の主な下人を若い世代での未婚率や初婚年齢の上昇等、未婚化・晩婚化の影響が大きいと捉え、自治体による「結婚支援」に踏み出した。
- 2013年度以降「地域少子化対策強化交付金」として、毎年30憶円前後の国家予算を全国の都道府県と市町村に分配。自治体によるマッチングアプリの運営、「官製婚活」が推進されている。
- 教育現場では中学生・高校生・大学生、そして市民に「医学的妊娠・出産に適した年齢」や「男女の不妊」に関する知識を提供。若い時期での結婚や出産を増やそうとする「ライフプラン」教育。そこで「卵子の老化」や「妊娠適齢期は35歳まで」など、女性の「産み時」に関する知識の啓発が行われ、プレッシャーをかけられた若い女性たちが高いお金を支払って「卵子の凍結」を煽られている。
- 岸田内閣では「異次元の少子化対策」が叫ばれ、予算をそれまでの3倍に増やした。安倍政権では30~40億円にとどまっていた少子化対策の予算を90億円以上とした。その中で「子育て世帯を優しく包む社会的気運の醸成のための情報発信」として、「少子化に対する国民全体の危機感共有のための情報発信等』、広告代理店メディア企業」に2.5億円が割り当てられている。「結婚いいね」の空気をいたるところに醸し出している。
- 2023年4月に国連人口基金が発表した「世界人口白書2023」では、人口が減少に転じる国もあるなか、『合計特殊出生率』を引き上げようという政策をとる国が増えており、女性の人権や自由な選択に悪影響が及ぶと懸念を示している。出生率の低さをもとにした議論は、どうしても女性の性や生殖に関する権利が制約されがちになると言っている。女性の人権や自由な選択を規制する人口政策は時代を悪化させることは確か。生殖に関する権利を擁護する政策は、すべての人々の繁栄と変わりゆく現実への適応可能性を生み出すとして、人口政策は男女平等に基づき社会や経済の発展を目指すべきであると結論付けている。
- 日本政府は出生率の基づくどころか、1992年に「出生率の低下やそれに伴う家庭や社会における子ども数の低下傾向」の意味で「少子化」という用語を新たに生み出し、人口減少に対する危機感を惹起させている。
- 「出生率」は人口の割合の議論だが、「少子化」は「子ども(人間)の数」が減っている」というよりあからさまな表現に他ならない。しかもこの用語は「人口学」的に厳密な定義があるわけではなく、議論に曖昧さが付きまとうと専門家からも指摘されている。
- 同白書では人口減少問題に対して、人口問題の議論のの中で事件をどう削り取られないようにするかということが重要視されている。「問題は人口が多すぎるのか、又は少なすぎるかではありません。問うべきは、望む数の子どもを希望する間隔で産むことができるという基本的人権を、すべての人が行使できているかどうかです」と声明文を発表している。
- 日本では「子どもを増やすにはどうすれば良いか』ということばかりが論じられている。日本では随所に「少子化は困難」や「子どもは国の宝」といった国家の存在を人権より優先させるような考え方が見て取れる。出生数をあげようとするのではなく、まずは一人ひとりが自分が望む生き方ができるようにすることを保障しなければならない。特定の価値観や人生観に影響されない、多様なライフスタイルを選び取ることができるように社会制度を設計することが真っ先に必要だ。
・・・頭の中の整理ができました。
私も少子化対策は大事だと思い込んでいましたが、性と生殖における個人の自由、権利が保障されることが何よりも大切であり、「少子化」にフューチャーした論議であってはならないということがとてもよくわかりました。
