「住宅確保要配慮者」の住宅の大問題

2024年07月04日

6月議会が終わったかと思ったらすぐにコロナに感染してしまい、その後も咳がなかなかおさまらず、報告がすっかり遅くなってしまいました。
6月議会の一般質問で私が取り組んだのは、「住宅確保要配慮者」の住宅問題でした。
昨年の12月議会でもこの問題に取り組み、私は市営住宅の必要性を訴えました。
しかし市の答弁はこの問題を国も十分認識しているので、「国の動きを含めて注視していく」というものでした。
この間住宅の問題に取り組む中で思うことがたくさんあり、改めて6月議会で取り組んだのでした。

高齢・障害・低所得などにより、住宅の確保に特に配慮を要する方々を「住宅確保要配慮者」と言います。
私は昨年10月以降、転居先の確保に困難を極める3人の方と出会いました。私が出会っただけでも3人いたということは、市内にはもっと多くの住宅確保要配慮者がいるものと思われます。

埼玉県セーフティネット住宅の現状は?

厚労省・国土交通省は「住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度」=「新たな住宅セーフティネット制度」に取り組んでいます。
埼玉県及び吉川市の現状について問いました。
吉川市のセーフティネット住宅の今現在の登録件数は68棟548戸、現在の空き家はゼロとの答弁でした。
この登録制度は必ずしも住宅の確保要配慮者の方だけが入れるということではなく一般の方も入居可能で、548個に必ず住宅確保要配慮者が入居しているということではないとの答弁でした。

追い詰められる市民が存在

私が相談を受けた方の一人はどうしても転居先が見つからず、「今住んでいるアパートの引き渡しが終わったら、消えようと思う」とのメッセージが送られてきました。
若者にこんなことを言わせる社会で良いのでしょうか。
市の自殺対策計画には「誰も自殺に追い込まれることのない吉川市を目指して」とあるのに、現実には住む家を失い、自殺すら考えるような状況に追い込まれている市民がいます。
こうした現状に市はどのように対処しようと考えているのかを問いました。

市は「緊急に行き場がないような場合、無料定額宿泊所をご案内するなどの対応をして、その上でその先の転居先をできるだけ早く見つけるようなご支援に努めている」と答えました。

無料定額宿泊所の現実

私が関わった方の一人は無料定額宿泊所に入居しました。
横幅は窓一間分もなく、布団を一枚敷くともういっぱいの狭さです。部屋には鍵がなく、ダニが大量発生しているそうです。
朝夕の食事が付きますが、入居費用は9万8千円。これを支払うと、手元に残る生活保護費はわずかです。
そこに入居してもう一度人生を立て直していくことができるのか、こうした施設が基本的な人権、健康で文化的な最低限度の生活を保障した住宅なのかという点に非常に疑問を感じます。

無料定額宿泊施設への入居者の推移と退所状況を問いました。

令和2年度は12名、令和3年度は9名、令和4年度4名、令和5年度3名、令和6年度現在のところ2名。ほとんどの方は短期間で退所しているとの答弁でした。

市営住宅の設置を

住宅確保に困難を極める方々の人間としての尊厳が保たれる住宅の確保が必要だと考えます。市営住宅の設置について、市の考えを問いました。
都市計画部長が答えたのは「市内には県営住宅もURもある。県と連携してセーフティーネット住宅の確保に努めている。市の方向性としては公的住宅やセーフティネット住宅の入居募集などについて情報提供を行うという方針。市営住宅の考えはない」というものでした。

本当に住宅のセーフティネットは機能しているのか?

しかし今回の質問の中で明らかになったように、セーフティネット住宅は現実としては機能していません。
県営住宅は募集期間が限られていて、住宅に困った人がタイムリーにいつでも入居できるというものでもありません。

また、URは例えば吉川団地には生活保護の方が新たに入居することはできません(入居中に生活保護になるのはOK)。
これは私自身がURで直接確認した事実です。
生活保護には「級地」という考え方があり、その自治体がどの「級地」かによって扶助費が違う仕組みになっています。
吉川市の「級地」は3-1です。
そして3-1の地域の住宅扶助費は3万7千円です。
実際に市内には3万7千円以下の物件はかなり少ない現実があるので、特別基準として4万8千円までの範囲内での家賃扶助を認めているそうです。
しかしURは市がどんな特別基準を設けようとも、生活保護の方が入居できるのはあくまでもその自治体の「給地」に応じた家賃以下の物件。
そして吉川団地には3万7千円以下の物件がないため、生活保護の方の入居は認めていないということです。

実際には県営住宅もURもセーフティネット住宅も、住宅確保要配慮者のためには機能していないというのが現実なのではないでしょうか。

改めて子ども福祉部長の見解も問いました。
「管理上の問題も懸念され、そこまでの考えは持っていない」という答弁で、とても残念です。