『動物会議』
先日立川まで足を運んだ『どうぶつかいぎ展』。
絵本『動物会議』(エーリヒ・ケストナー著 ヴァルター・トリアー絵 池田香代子訳 岩波書店)の詳細をなかなか思い出すことができず、改めて読み直してみました。
愚かな戦争を繰り返す人間たち。
戦争に革命・ストライキ、いつでもひどい目に遭うのは子どもたち。
なのに大人たちは図々しくも「子どもたちの未来のためにやった」と言い訳をする・・・。
こないだの戦争(第二次世界大戦?)ではドイツのサーカスのテントが焼け落ちて、動物も人間も悲鳴をあげた。
なのに、性懲りもなく戦争を繰り返す大人たち。
子どもたちのために何ができるのか・・・。
動物たちは真剣に考え、ケープタウンで開かれる世界各国の首脳会議の開催日に合わせ、動物ビルにすべての動物の代表を終結させた「動物会議」を開催したのでした。
白くまのパウル君の発言。
「ぼくたちがここにあつまったのは、人間の子どもたちの力になるためです。なぜか?人間たちじしんが、このなによりもたいせつなつとめを、ほったらかしているからです!ぼくたち動物は、団結して、二度と戦争や貧困や革命がおきないことを要求します! そういうことは、おきないようにしなければなりません! なぜなら、おきないようにできるからです! ですから、おきないようにすべきです!」。
「国」という考え方をすてることを求める動物会議と、ケープタウンに集結するおえらいさんたちとの間にはたくさんの軋轢がありました。
しかしそれでもとうとう、おえらいさんたちは動物会議の提案する条約に署名するのでした。
- すべての国境の標識と警備兵は、これを排除する。もはや国境は存在しない。
- 軍隊およびすべての銃や爆弾は、これを廃棄する。もはや戦争は存在しない。
- 秩序維持のために不可欠な警察は、弓と矢を武器とする。警察は主に科学と技術が平和のためにのみもちいられるよう、これを監視する。もはや人殺しのための科学は研究されない。
- 役所、役人および書類保管庫は、どうしても必要な最小の数にまで、これを削減する。役所は人間のためにある。その逆ではない。
- これからは、教師が、もっとも高い給料を受けとるものとする。子どもを真のおとなに育てるというのは、もっとも崇高な、もっとも困難な任務である。真の教育の目的は、次の点にある。すなわち、良くないことをだらだらと続ける心が、もはや存在しないようにすることである。
平和への願いを込めて、1949年に発表された絵本です。
作者のケストナーとトリアーには壮絶な体験がありました。
ケストナーはナチス政権下のドイツで著作を焼かれ執筆を禁止された体験を持ち、ユダヤ人の トリアーは家族とともに亡命を余儀なくされました。
二人がこの絵本を発表して70年以上を経た今も、ウクライナでは悲しい戦争が起きています。
真偽のほどは明らかではありませんが、化学兵器が使用されたとマリウポリ市長が表明しました。
そのマリウポリでは2万人以上が亡くなったとも明らかにされ、実に市民の20人にひとりが殺されている現状です。
しかも今日のしんぶん赤旗の報道によれば、ロシア軍は「レイプを武器に」軍事侵攻を展開しているとのことです。
戦争がいかに深刻に人権を侵害するものなのか、改めて思い知らされています。
人間が戦争のない社会をつくるための努力をすることのできない存在だとは、思いたくありません。